情報、歓迎の気持ち 発信を
2021年に東京パラリンピックが開催されたが、これを契機としてJNTOソウル事務所では高齢や障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を推進するユニバーサルツーリズムのプロモーションに取り組んでいる。12月には、バリアフリー旅行動画「FEEL FREE with JAPAN」を公開し、1月4日までに174万回の再生を記録した。本動画は、車いすに乗った観光客が空港から観光場所、宿泊先まで、日本の整ったバリアフリー設備を利用して自由に観光する姿を映したものである。
日本は、総務省統計局の発表(21年9月)によると、総人口に占める65歳以上高齢者の割合が過去最高の29.1%を更新した、世界一の超高齢社会である。バリアフリー設備が整っている公共交通機関や都市空間や車いすで安心して旅行できる観光地も多く、バリアフリー先進国ともいえる。全ての人が楽しめるようつくられた旅行を目指すユニバーサルツーリズムは大きなポテンシャルを持つ有望な市場である。「誰一人取り残さない」をスローガンに30年までに全世界で達成を目指すSDGsの観点からも、バリアフリーへの取り組みは国内外の観光客を受け入れる上で非常に重要になる。
韓国市場でユニバーサルツーリズムに率先して取り組んでいる理由として、韓国は少子化が深刻であるため、今後急速に高齢化が進むと予測される市場という点が挙げられる。韓国統計庁の発表(21年12月)によると、総人口のうち16.6%が65歳以上の高齢者で構成されているが、この比率は25年に20.6%、35年に30.1%、50年には40.1%に高まることが予測されている。障害者のみならず高齢者も車いすを利用する人は少なくない。韓国も1988年のソウルオリンピックを契機としてバリアフリー設備が導入された経緯があるが、日本と比較すると段差などが多く、車いす利用者を想定しない施設も残っている。
ただし日本は海外と比較してバリアフリー設備が整っているものの、十分に情報発信できていないように感じる。外国人旅行者を含む旅行者の車いす利用も想定し、多言語でのバリアフリー情報の発信を行い、歓迎する気持ちを伝えることが「心のバリアフリー」として大事である。
ソウル事務所が発行するガイドブックでは、掲載する全ての施設についてバリアフリー対応かを確認し、対応可能施設にはバリアフリーマークを表示している。その際、真に実用的なバリアフリーとなっているかを確認するため、施設内での車いす移動が可能か、バリアフリートイレが設置されているか、館内で車いすが貸し出し可能かといった基準を設けてマークを掲載している。また、車いすで乗車できるレンタカーやタクシーなどの交通機関の情報も掲載し、車いす利用者もそうでない人も同じように自由に観光できるようガイドブックを構成している。車いす利用者にも適した旅行先として日本をプロモーションできるよう、継続してユニバーサルツーリズムに取り組む予定だ。
JNTOソウル事務所が作成、公開しているバリアフリー旅行動画