訪日観光の本格再開 待ち望む
本年も新型コロナウイルスへの対応に追われるスタートとなったが、ようやく国際的な往来に動きが見え始めた。今回は、フィリピンにおける政権交代、新型コロナウイルスを取り巻く状況、観光面での現況等を、直近の旅行博の模様と共にご紹介する。
2022年5月、フィリピンにて6年ぶりの大統領選挙が行われ、フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏が就任。7月25日に施政方針演説を行い、前政権による大規模インフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」の継続・拡大や、感染拡大により打撃を受けた経済回復等を強調。観光産業の復興も重点分野の一つに掲げられた。また、7月以降、感染者が増加傾向にあり、8月は1日約3~4千人台で推移しているが、世界最長ともいわれた20年3月から5月にかけてのロックダウンをはじめとした長期にわたる規制で経済が打撃を受けたことから、マルコス大統領は再び厳しい行動制限は設けず、経済の回復を目指すと述べている。
フィリピンの入国規制に関しては、22年2月10日より海外の観光客受け入れを再開、その後、段階的な緩和を行い、5月30日以降、ブースター接種者はフィリピン入国前の陰性証明が不要となった。こうした背景もあり、主に高中所得層において海外旅行意欲が高く、当地旅行会社へのヒアリングやJNTOマニラ事務所SNSへの問い合わせ等からも、訪日旅行への関心、意欲の高まりが日々うかがえる。
一方で、添乗員付きパッケージツアーによる訪日旅行のみが認められる現状の制度において、当地にてボトルネックの一つとなっているのは、査証発給に係る点である。フィリピン人の訪日には、コロナ禍前より査証取得が必要であり、現在も有効な数次査証を保有するリピーターが多く存在するが、今般のパッケージツアーでの観光査証の発給を受けた場合、保有中の数次査証が失効してしまうため、現時点での訪日をためらう傾向が少なからず見られる。
こうした中、6月、フィリピン旅行業協会主催のBtoC旅行博「Travel Tour Expo」が開催された。例年より規模縮小となったものの、3日間で約3万3千人が来場し、当所で出展したビジット・ジャパン(VJ)ブースも行列ができるほど盛況だった。ブースでは訪日旅行に関する質問が多く寄せられ、前述の査証発給の点を懸念する声があったものの、「それでも家族で日本に行きたい」と旅行会社のブースへ向かう来場者も多かった。
フィリピンからの訪日客数は、13年のビザ緩和開始以降、感染拡大前である19年の約61万人まで順調に伸びていた。当所の運営するSNSでもフォロワーとコミュニケーションを取っているが、今回の旅行博での問い合わせや日本への思いを直接聞き、多くのフィリピン人が自由に訪日できる日を待ち望んでいることを実感した。また、旅行業界からも、訪日旅行商品販売への熱い意欲を日々感じている。こうした需要に応えるべく、今後も最新の市場動向やニーズに対応しながら、継続的に日本各地の魅力を発信していきたい。
フィリピンのBtoC旅行博でのビジット・ジャパンブース