【日本政府観光局インバウンド最新リポート 97】香港人の「里帰り」 気軽に、頻繁に、日本各地へ JNTO香港事務所 小沼英悟 所長


2023年1~2月にJNTO香港事務所が実施した動画広告。日本へ「里帰り」する香港人の気持ちを「ただいま」の一言で表現した

 香港人による日本への里帰りが、活発化している。「日本生まれの香港人がそれほどいるのか?!」と疑念を持たれたかもしれない。疑念はもっともである。香港では日本へ旅行に行くことを「返郷下(里帰りする)」と表現する。日本生まれである必要はない。香港生まれ香港育ちでも日本へ里帰りする。ちなみに、日本と競合する旅行目的地である韓国、台湾、タイへ旅行する場合、里帰りするとはあまり言わない。

 以下、香港からの訪日旅行の状況、今後の課題、そして、JNTO香港事務所による今年度の重点取り組みについて報告する。

 香港からの訪日旅行は2022年10月に個人旅行(個別手配)が解禁されて以降、急速に回復し、旧正月休暇5連休があった23年1月は15万人を突破した。コロナ前19年の香港人訪日旅行は毎月15万人から25万人の水準で推移していたので、コロナ前の最低水準までは既に回復したと言える。

 香港では域内での新型コロナウイルス感染症の流行鎮静化に伴い、感染対策としての行動制限は3月にマスク着用義務が撤廃されたことで皆無となり、入境規制も4月にPCR検査等による陰性証明書が不要となり皆無となっている。公共交通機関の乗客の6~7割は今もマスクを着用しているが、コロナはほぼ過去のことである。

 経済も回復傾向が顕著である。香港政府によると、23年第1四半期(1~3月)のGDP成長率は前年同期比2・7%増、5四半期ぶりのプラス成長だ。香港政府は23年通年の成長率を3・5~5・5%増と見込んでいる。今後の訪日旅行動向を読む上で景気動向は懸念要因とはならないだろう。

 今後の香港からの訪日旅行の正常化、すなわち19年並みの状況、水準回復のために、大きなカギを握るのが、香港から日本への直航便の復便だ。コロナ前19年の冬ダイヤにおいて、17空港へ香港からの直航便が就航していたが、5月初めの時点では8空港にとどまっている。3月末に閣議決定された「観光立国推進基本計画」が掲げる「地方誘客促進」には地方空港への復便は欠かせない。

 復便進展に影響を与えるのが「人手不足」問題だ。空港における地上業務や保安検査人員の「人手不足」は日本だけでなく、香港においても同様だ。香港空港管理局よると、空港で勤務する人間の数はコロナ前との比較で3割減少している。「人手不足」解消のためにJNTOができることはあまりないが、JNTO香港事務所は今年度の重点取り組みとして、航空会社と経費を出し合っての広告キャンペーンを実施する。復便を促進するべく現在準備中だ。香港人が気軽に、頻繁に、日本各地へ「里帰り」できるよう鋭意取り組んでいきたい。


2023年1~2月にJNTO香港事務所が実施した動画広告。日本へ「里帰り」する香港人の気持ちを「ただいま」の一言で表現した

 

 
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