【日本政府観光局インバウンド最新リポート32】急成長する中国スキー市場 JNTO北京事務所 服部真樹 所長


日本でのスキーや雪遊びに憧れ

 冬のオリンピックがいよいよ来年2月に迫ってきたが、平昌の次の開催地はどこかご存知だろうか。そう、ここ北京である。寒さは厳しいものの、雪が積もることの少ない北京では、ウインタースポーツと言えば、定番はスケートだったが、2015年の開催決定前後から、スキー市場が急成長を続けている。

 もちろん、それ以前にも北京周辺にスキー場はあった。筆者が前回当地に赴任した2003年当時は、コースにだけ人工雪を降らせたようなスキー場で、日帰りで3~4時間程度滑るのに適した規模。中上級者向けコースもあるが、中国人のほとんどは、ほほ笑ましいほどの初心者だった。それがどうだろう、今年2月に行ったオリンピック会場となるスキー場は、もちろん人工雪だが、6人乗りリフトやゴンドラを備え、スキー場の難易度を示す標高差は510メートルの規模、北欧風ホテルも建設中。中上級者コースでは中国人家族連れがスキーを楽しんでいた。

 今年2月に発表された「2016中国スキー産業白書」によると、16年にスキーをした人は中国全土で延べ1510万人で、ここ2年間は毎年約2割ずつ増加している。

 スキー場の数も646箇所で、ここ2年間は毎年約80箇所ずつ増加しているようだ。

 しかしながら同白書は、中国国内のスキー場のうち75%はごく簡単な施設で初級者コースのみの観光体験型スキー場、22%は大都市近郊の地元住民向け日帰りスキー場で、大型宿泊施設を備えたリゾートスキー場は3%に過ぎないとしている。また、標高差は100メートル以下のスキー場が75%超で、300メートル以上のスキー場は3%に満たないと指摘している。

 同白書はまた、16年のスキー実人数は1133万人で、上記の延べ人数と比較すれば、ほとんどの人が1年に1回、日帰りでしかスキーをしていない勘定になるとしている。中国国内のスキー場に飽き足らない熟練スキー愛好家たちの目は、海外でのスキーに向けられており、その48%という圧倒的多数が、日本でスキーをしてみたいと熱い視線を送っているようだ。

 日本でのスキーに憧れている中国人は北京に限らない。日本政府観光局(JNTO)が17年2月に実施した「深度遊(体験型観光)に関する意識調査」によると、冬に日本に行きたいと思う理由としてスキー・スノーボードを挙げた人の割合は、北京、上海、広州の3大都市いずれも3分の1程度で大差はなかった。年齢層では、男女とも20代、30代より40代で顕著に多く、子どもがある程度大きくなった家族連れにニーズがあるようだ。また雪の楽しみ方として、スキー・スノーボード以外に「雪を見ながら温泉に入る」「雪を見ながらお酒を飲む」という回答も多い。こうした「本物の雪」を楽しむことのできる総合的なファミリーリゾートとしてのスキー場をPRしていくことが、急成長する中国スキー市場を取り込む鍵となりそうだ。

 
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