ツアー多様化ヘ提案力期待
11月からドイツ旅行業界の新年度が始まった。各旅行会社は来年のツアー商品カタログを全国の旅行代理店などに配布し、販売を開始した。今年は、例年に比べ新年度商品の発表が早くなってきているとのこと。旅行者の予約動向が早まってきていると言われており、各社ともこの動きに対応しているようだ。
2018年の訪日旅行ツアーを見ると、357種類が販売され、前年の320から10%以上増加している。訪日旅行に対する関心の高まりに対応した結果である。
しかしながら、その8割は一般周遊ツアーで、訪問地はゴールデンルートプラスαと従来型の商品が中心であり、訪問地の広がりは限定的である。これは、ドイツ人一般にも観光地としての「日本」が認知されてきたものの、いまだ多くの人にとっては、日本のイメージは限定的で、言語環境やコストを気にする人が多いということである。
FIT向けのツアーも増加しており、出発日が毎日設定され、日程に縛られずに日本を周遊したい層に対応する商品もあるが、訪問地は周遊ツアーとほぼ同じである。
注目すべきは、アウトドア好きなドイツ人向けにアクティビティ系のSIT商品として、スキーツアー、ハイキングツアーが増加している点だ。特にハイキングツアーは、前年の28本から36本へと大きく増加。このほか、自転車ツアーやレンタカーツアーなども販売されている。これらツアーの特徴は、ゴールデンルートではない地域を訪れるものが多く、白馬・北海道(スキー)、熊野古道・中山道(ハイキング)、しまなみ海道・能登半島(自転車)、北海道・九州(レンタカー)が中心となっているが、残念ながら、これらについても訪問地のバリエーションが増えていない。
訪日需要が旺盛なもののバリエーションが拡大しない理由は、ツアーを企画・販売する当地オペレーター自身が、訪日経験も少なく、日本の事情、情報に乏しいことによるものであり、現状ではドイツ側からの企画提案が出にくい状況となっている。
当所としても、セールス訪問やニュースレターの発信などを通じ、オペレーターに対して新たな情報提供を心掛けているものの、ツアーを組むに際しての手配や価格など商材としての具体的な情報がさらに求められている。最近、ドイツ市場へのセールスへの関心が高まっているが、期待の高い当地オペレーターに対しては、観光地の情報提供を中心としたソフトセールスでは効果が低い。今後は日本国内で活躍するランドオペレーターや各地のDMOの提案力が大いに期待される。
JNTOフランクフルト事務所としては、各地の自治体やランドオペレーターなどの民間事業者の方々と連携しながら、ドイツ人の好むテーマをさらに掘り下げ、地方の魅力を積極的に発信し、新たなツアー商品造成の後押しを進めていきたいと考えている。