お茶屋ってどんな仕事をしているのだろう。身近な存在でありながら、詳しいことまでは知られていないのが実情かもしれません。お客さまにおいしいお茶を提供できるように、東京繁田園が地域に根ざしながら、日頃、どんな思いでお茶と向き合っているのか、お話ししたいと思います。
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街中で焙(ほう)じ茶の香りに出合ったことがおありでしょうか。
私共では、店主自ら大型の焙じ機で番茶や茎茶を煎(い)るのですが、そばを通る人たちは口々に、「いい香り…」と穏やかな表情に。子どもたちも駆け寄ってきて「あ~、いい匂い」と。この感覚は日本人の遺伝子に組み込まれているのではと思うほどです。
焙じ茶の主な香りはピラジンという成分で、高温での火入れにより発生します。この香りを十分に楽しむには熱湯で淹(い)れるのがポイントです。
秋刀魚(さんま)を焼いたり、焼き肉をした後の部屋に臭いがこもった経験をお持ちの方も多いでしょう。そんな時にはお茶を使った消臭をお勧めします。フライパンで炒(い)る方法です。古くなったり、いただき物で口に合わないお茶で十分です。
また、それぞれの家には生活している本人たちには気付かない匂いがあるものです。お客さまを迎える時などに茶香炉をたくのはいかがでしょう。お茶の香りでお迎えするのも素敵なおもてなしではないでしょうか。蝋燭(ろうそく)の柔らかな光にも癒やされることでしょう。
緑茶の中には数百種にも及ぶ香気成分があります。春の精が宿るといわれる新茶の香りには、青葉アルコール、リナロール、ゲラニオールなどが含まれ、玉露の香りには、青(のり)のようなと評されるジメチルスルフィドが多く含まれています。
自社を印象づけるため、オリジナルの香りを機内に漂わせている航空会社も出現し、百貨店でも再来店を期す香りの効果に注目し始めたとか。
それにしても「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」と思えるような強過ぎる香りの商品が増えていると感じるのは、私だけでしょうか。