毎年秋になると、その年の春に摘んだお茶の出来を競う品評会が、全国の各茶産地で開催されます。生産家が丹精込めて育て、作ったお茶の質を審査し、格付けします。この品評会の入賞茶や出品茶は、入札によってしか獲得できず、販売にもつながらないので、参加者にとっては、新茶仕入れの時期に次ぐ緊張の場なのかもしれません。入札価格が低過ぎても落札できず、いくらほしいお茶でも高過ぎる金額を入札票には記入できないと、葛藤もあることでしょう。
品評会に参加した夫は、少々の疲れと達成感を漂わせ、落札結果と開催地ならではのお土産を手に帰宅します。お疲れさまでした。
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「お祝い事のお返しにお茶を使ってもいいのですか? なんだか仏事のお返しの印象が強いのですが」と、店頭で聞かれることがたまにあります。
平安時代初め、中国に遣唐使として渡った最澄、空海など高僧が茶を伝えた歴史の印象が強いからでしょうか。さらに鎌倉時代には、座禅などの修行の際の眠気覚ましに茶(カフェインの覚醒作用)が利用され、お坊さんとお茶の関係は深かったといえるので、日本茶のおつかい物に対してそのような疑問を持つ方がいても当然かもしれません。
しかし、長い歴史の中で日常茶飯との言葉が生まれたくらい、日々の生活に溶け込んだお茶、ことわざだけでなく、科学的にも効能が立証されているお茶、季節感の漂う新茶を、さまざまな場面の贈り物としてぜひお勧めしたいと思っています。とはいえ、お茶自体の持つ力に甘えてしまい、ギフトとして磨き上げる努力が足りなかったことを反省している日々でもあります。
家族構成や食生活の変化、健康への深い関心などに伴い、多種多様な飲料が流通している昨今、工夫を重ねなければ、贈り物としての日本茶の魅力が減っていくばかりと身に染みて感じています。お茶の品質の吟味は当然として、魅力的なプチギフトの提案、小分け販売、ティーバッグへの対応など、取り組むべきことはいろいろあります。工夫を凝らす努力を忘れてはならないと思いつつ、「言うは易(やす)し、行うは難し」、この言葉、自身の人生で何度つぶやいたことでしょう。