【日本茶インストラクターが勧める 素敵なお茶生活 48】2人の父② 繁田聡子


 もう1人は、実家の父。三十三回忌を済ませたばかりです。

 子煩悩で、仕事熱心。気が短く、神経質な面もあり、税理士の仕事上、気になるところがあると、自宅に戻った後でも、確認のため、車で事務所に戻るような人でした。しかも、母を連れてです。母は、秘書と事務員役を兼ねていたようなものでした。顧問先の方々から信頼され、仕事に家のことにと奮闘していましたが、いつも疲れている様子に、「人からいくら褒められても、どれだけの意味があるの。もっと自分のために時間を作って、楽しみを見つければいいのに」と生意気にも口にしたことがありました。

 父は教育熱心でもあり、「教育ママ」ならぬ「教育パパ」の走りだったような…。兄が矢面に立っていたので、私への風当たりは弱かったような気もします。頑固なところもあり、父への反対意見を皆の代わりに伝えるのは、いつからともなく娘である私の役目でした。父に対して辛辣(しんらつ)な態度を取ったりすることもありましたが、大学生になっても腕を組んで歩いていて、「お父さんっ子ね」とよく言われたものです。結婚当初の意気地のない娘をいろいろと励ましてもくれました。母もたびたび上京し、手伝ってくれ、親のありがたさに感謝しかありません。

 また、初孫である長男をこの上なくかわいがってくれました。小学3年生の時、葬儀でお別れの言葉を、涙をこらえて伝えていた幼く悲しい姿が目に浮かびます。成長する孫たちを見てもらいたかったのに、64歳でこの世を去ってしまいました。今、同じ年を重ねた私が、この文章をつづっているのも不思議な巡り合わせのような気がしています。

     ◇

 結婚とは2人で新しい家庭を築き上げていくことと、考えている方がほとんどだと思います。

 商家の長男に嫁いだ私の場合、まずはできあがった型(家)に自分自身を修正しながら、はめ込むような日々であった気がしています。要するに退社時間のない新入社員のようなものです。それまでの20数年の人生での、「頑張れば結果はそれなりについてくる」と、若さゆえの楽天的な考えは打ち砕かれました。商売など何も知らない核家族で育った私の言動は、義父にとって物足りないものだったに違いありません。

 
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