お茶をおいしく淹(い)れるには、水は大切な要素の一つです。日本の水道水の質は世界レベルで見ればかなり高いといえますが、衛生上、当然のことながら塩素が含まれています。この遊離残留塩素、いわゆるカルキはお茶の味と香りを邪魔します。浄水器を使わずにカルキを減らす方法は、沸騰後、薬缶(やかん)のふたを取り、さらに5分ぐらい沸騰させ続けることです。この方法でカルキ臭はある程度減りますが、完全に取り除くことはできません。鉄瓶以外では効果が少ないとの実験結果も出ています。(静岡県お茶と水研究会、実証実験より)
カルキ臭対策としては、「汲(く)み置き」も効果的です。水道管に長時間留まっていた朝の水道水よりは、日中流れ続けた夜間の水の方がお勧めです。さらに、汲み置きの水に炭を入れると水質はかなり浄化されます。また、防災上も水道水の汲み置きは大切です。
関東大震災の避難時、とっさに持ち出した薬缶の水とかつお節で急場をしのいだとの話もあるくらいです。ペットボトルの水がなかった時代の話ですが、「備える」大切さは十分に伝わってきます。
水を購入する場合、軟水が主である国産の水は問題ありませんが、外国産の硬水で日本茶を淹れると、白く濁ることがあります。ミネラル分の影響です。また、硬水で淹れると、渋味は抑えられ、ある意味飲みやすいといえなくもないのですが、お茶の味わいとして、「味のしまり」でもある渋味ははずしたくありません。お米はその産地の水で炊くのが最高といわれますが、お茶もその産地の水で淹れるのが最適との説には一理あります。
産地ではない消費地では、カルキ成分を除いた水で淹れるのが、お茶の味と香りを十分に楽しむ基本だと思います。