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玄関、ロビー、客室など新装 ロケーションの良さ前面に
千葉県天津小湊温泉の宿中屋(中田弘治社長)は、房総半島の南、城崎海岸沿いに館を構える風光明媚な宿。2011年から始めた大規模設備投資は今回で5回目、約4カ月の工事期間を経て3月1日にリニューアルオープンした。開業当時よりリピーターからの支持が高く、常に高稼働率を誇る同旅館。5つ星旅館としてさらなるラグジュアリー感を演出するため、オーシャンビューの立地を前面に生かしたこだわりの設備・サービスを紹介する。
「海の特等席」を体現したソファー席
今回のリニューアルで手掛けたのは、玄関、ロビー、食事処、源泉半露天風呂付き客室2室。ロビーに足を踏み入れると杉の木がふんわり香るとともに、大きな窓から城崎海岸の美しい眺めが出迎え、旅の疲れを癒やしてくれる。
杉の木がふんわり香るロビー
客室の目玉とすべくリニューアルした客室「海辺の町(4階)」と、「浪漫の歌(5階)」は、開放的なロケーションが自慢。城崎の海をベストアングルで楽しんでほしいという思いから、高さや配置にこだわったソファー席は、まさに「海辺の特等席」を体現している。海沿いに備え付けられた半露天風呂は、「美人の湯」でも知られるナトリウム塩化物泉の自家源泉をふんだんに使用。夕方は水平線のかなたへ沈む夕日を眺めながら、夜はきらめく星を数えながら、起床後は朝焼けの静けさの中でさざめく波の音を聞きながら―心ゆくまで堪能できる。
「美人の湯」でも知られる自家源泉を使用した半露天風呂
以前から評判の高い料理は、伊勢エビやタイなど房総沖合の新鮮な海の幸を使った磯懐石料理。今回は料理に加え、提供する空間にも力を入れるべく、半個室でゆったりくつろげる食事処「渚」と「浜辺の物語」をリニューアルした。江戸紫やくちなしなど、「古代色」を基調とした統一感のあるデザインに仕上げ、席には古代色の意味を紹介したボードを設置。前菜料理にも手書きの説明書を添えるなど、至るところに女将のきめ細やかな気遣いが感じられる。「一つでもお客さまの会話のきっかけになれば」と中田女将は語る。
食事処は古代色を基調とした統一感のあるデザインを採用
館内には、アロマルームや、生演奏が楽しめるコンサート舞台などの設備が充実しているほか、1階にはギャラリーを新設。客室にも設置しているお香や地元の陶芸家の作品などが展示され、中田女将のセンスが光るラインアップが宿の気品を引き立てる。
客室数は34室で、1泊2食付き2万3千円から(税込み)。自慢の露天風呂付き客室のほか、2~3階の和室「ノスタルジックロマン」は、手ごろな価格で提供するなど、幅広いニーズに対応。若いカップルでの利用客も多く、客室稼働率は常に80%と高い稼働率を誇っている。
工事のほか、新型コロナウイルスによる風評被害、昨年9月に発生した台風13号による停電など、さまざまな苦難を経験してきた同旅館。中田女将は「どんな時もリピーターに支えてこられた」とこれまでを振り返り、「手段ではなく、目的地として来てくださるお客さまが多い。度重なる工事でご迷惑をおかけしているが、新しくなるたびに変化に気付いていただき、お褒めの言葉も日々頂く」と笑顔で話す。
中田淳子女将
これまでの連続投資により、スタッフにも思わぬ効果が生まれた。「旅館がどんどん奇麗になるたびに、従業員のモチベーションも上がっている。工事期間中も不自由ながらもお客さまの満足度を向上させるための意見や工夫がたくさん挙げられ、率先して行動に移す姿が印象的だった」と中田女将。従業員の士気も高く、リニューアル後も順調な滑り出しをみせている。
「当館は完璧な旅館ではないが、気後れすることなくほっとできる宿。旅館の評価よりも、お客さまのただ『楽しかった』の一言が聞きたい」と中田女将。宿中屋ならではのおもてなしに磨きをかける日々だ。
女将のセンスが光るギャラリー