著者の徳江氏は東洋大学国際観光学部の准教授。あとがきで「(コロナ禍で)観光どころか会食も自粛が求められる中で、海外のリゾートの本などを出してもいいのだろうか、と何度も逡巡(しゅんじゅん)した。しかし、リモートの講義が続く中で、学生たちには『観光は単なる遊びなどではなく、人間が、健康で文化的な最低限度の生活をするために必要なことだ』と伝えていることに改めて気づいた」と本書の刊行に至るまでの心情を吐露している。
アジア発祥のラグジュアリー・リゾートホテルである「アマンリゾーツ」と「バンヤンツリー」について、それぞれの誕生、成長展開の軌跡、マーケティング戦略などを現地調査の結果も踏まえて詳細に記述。掲載写真点数の多さからは、著者のホテルフリークぶりもうかがえる。
「第4章それぞれの比較」では、両リゾートチェーンの立地、マーケティング、施設を比較分析。各宿泊経験者の声も集めて紹介している。学者によるバンヤンツリーの考察は他に類を見ない。
「第5章リゾート発の宿泊産業におけるイノベーション」では、上流階級のものだった初期のリゾート、観光の大衆化によるメガリゾートの普及などに触れた上で、次のように記している。
「宿泊産業も、時に革新(イノベーション)があったことにより、現在の姿に至っているのである。そしてその担い手の多くは『よそ者、若者、ばか者』であり、ゼッカ氏(アマンリゾーツ創業者のエイドリアン・ゼッカ氏)やホー氏(バンヤンツリー創業者のホー・クォン・ピン氏)もそうだったのではないだろうか」。
定価は1870円(税込み)。単行本(ソフトカバー)、224ページ。7月23日初版発行。問い合わせ先=創成社TEL03(3868)3857。