地方が主役の誘客へ 競争力の強化が課題
2017年の訪日外国人旅行者数は、過去最高の2800万人に達する見通しだ。13年に年間1千万人を突破した後は年々、堅調な伸びを示している。ただ、課題となっているのが訪日外国人旅行者の地方への誘客拡大だ。
観光庁の統計によると、16年(年間確定値)の外国人延べ宿泊者数の都市・地方構成比は、三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県)が60%、地方部(三大都市圏以外)が40%。都市部への偏りが目立っている。
また、外国人延べ宿泊者数の上位10都道府県((1)東京(2)大阪(3)北海道(4)京都(5)沖縄(6)千葉(7)福岡(8)愛知(9)神奈川(10)静岡)の合計は、全体の80%を占めている。三大都市圏以外では北海道、沖縄、福岡、静岡が入っているが、外国人旅行者が多い地域と、そうでない地域の差はひらいている。
政府は、「地方創生」に向けて地方への誘客拡大を重視している。観光振興の中長期の目標や施策を示した「明日の日本を支える観光ビジョン」には、外国人延べ宿泊者数の地方部比率を20年に50%に、30年には三大都市圏を逆転して60%に引き上げる目標を掲げている。このために地方部の外国人延べ宿泊者数を20年には現状の約3倍に相当する7千万人泊、30年には1億3千万人泊を目指す。
外国人旅行者を誘致するには、各地域がグローバルな競争力を持つ必要がある。地方誘客への提言として、フランス観光開発機構ジェネラルマネージャーのクリスチャン・マンテイ氏は、17年9月のツーリズムEXPOジャパン・訪日旅行シンポジウムで「地方のアイデンティティが大事。多様性が力になる」「スキー、ワインなど、地域は何らかのテーマを持ち、その分野で世界トップ3の観光地を目指すべき」と指摘した。
日本の地方には本来それぞれに個性があり、スノーリゾート、温泉地、農山漁村など、優れた観光資源も多くある。受け入れ環境整備や情報発信を強化すれば、世界的な観光地と肩を並べることは十分に可能だ。2020年に向けてインバウンドの主役は地方であるべきだ。
【向野悟】