「儲からない」着地型 普及促進つながるか
2017年5月26日に法案が成立した「旅行業法の一部を改正する法律」が1月4日から施行される。そのポイントの一つは、ランドオペレーターの規制。きっかけは2016年1月15日に起きた軽井沢スキーバス事故で、ランドオペレーターが関わっていたことだ。これまで規制の対象外だったランドオペレーターに対する規制の在り方について検討されてきた。
今回の業法改正で、ランドオペレーターを「旅行サービス手配業者」と位置付け、登録制度を創設。管理者の選任、書面交付などの義務付け、悪質業者への登録取り消しなどを行い、旅行の安全・安心、旅行者の利便などを確保する。この規制によって痛ましい旅行の事故が二度と起こらないことを願う。
ポイントのもう一つが、旅行業務取扱管理者の改正で、それによって地域を巡る体験・交流型の着地型旅行を促進させるのが狙いだ。
着地型旅行を取り扱う地域限定旅行業への参入を促進するため、地域に限定した知識のみで取得できる地域限定旅行業務管理者の資格制度を創設。併せて、地域限定旅行業者に限り、1人の旅行業務管理者が複数の営業所を兼務することを解禁する。営業エリアは営業所のある市町村と隣接する市町村とした。
地域の魅力をよく知る地元関係者の手による着地型旅行については、全国旅行業協会(ANTA)や株式会社全旅の主導のもと、全国の中小旅行会社がその普及に努力している。しかし、思うように進まない。理由は明白。値段が安く、集客数も少ない着地型商品は、旅行会社にとって「儲からない」からだ。
観光庁では、業法改正によって地域の旅館・ホテルや観光協会、日本版DMOなどが地域限定旅行業への参入をしてくれることを狙う。これらの担い手は、旅行客が周遊、滞在してくれることでメリットを得られる。だが、儲からない事業にどこまで力を入れるか。日本版DMOも地域の「稼ぐ力」を引き出す「観光地経営」がテーマだ。
着地型旅行が筋書通りに普及するかに注目したい。
【板津昌義】