新法が6月15日施行 制限条例制定に注目
一般の住宅に有料で旅行客らを泊める民泊を全国で解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日に施行される。旅館業界にとって注目すべきなのは、都道府県、政令指定都市、保健所を設置する区市が民泊を制限する条例をどれだけ制定するかだ。
民泊新法は、訪日外国人客の増加で宿泊施設の不足が懸念される中、民泊をこれらの客の受け入れ先として認める一方、行政がその実態を正しく把握するのが狙い。
既に政府の規制改革の一環で、国家戦略特区内での「特区民泊」が東京都大田区と大阪府、大阪市、北九州市、新潟市で行われているが、旅館業法上の営業許可を受けていない「ヤミ民泊」も特区外の都市部などで横行。夜中の騒音やルールを守らないごみ出し、公共スペースでの不審な行動など、地域住民の安寧な生活環境を脅かす事案が散見されている。
民泊新法では、民泊営業を行う者には都道府県知事への届け出、施設の管理を民泊営業者から受託した管理業者には国土交通省、サイトなどの仲介業者には観光庁への登録を義務付ける。行政が民泊利用の実態を把握するため、民泊営業を行う者に自治体への2カ月ごとの利用状況報告も省令で義務付けている。なお、届け出などの準備行為は法律の施行に先駆けて3月15日に開始される。
法律では民泊営業を年間180日以下に規定。そして地域の事情により都道府県などが条例で、この日数をさらに短縮したり、営業できる区域を制限したりすることを認めている。
既に各自治体がこの条例制定を検討している。第1号として東京都大田区が12月8日、住居専用地域や工業地域での民泊営業を禁止する条例を区議会で可決成立させた。民泊新法施行に合わせて6月15日に施行する。このほか東京の他の区や京都市、北海道でも条例の制定が議論されている。
旅館業界は地域の安心、安全を確保する観点からこれらの条例制定を促す陳情活動を各地で展開しており、今後もその活動に注力する方針だ。
【森田淳】