ゆこゆこ38歳社長が挑む
平日の稼働上げるDNA深化 足腰強化と裏側DX化を奔走
――コロナ禍の中、現在の足元の業況について。
「上半期は、例年から見て平均して34%程度だった。今年は1月から赤字が続くも行動制限が緩和された10月からはようやく単月で黒字に転換した。反転攻勢への準備が整った」
――受注増のエリアは。
「鉄板エリアである伊豆箱根、湯河原などは伸びている。マツタケが豊作な上信越、紅葉の名所を目指した予約も多く入っている」
――観光・旅行業界の市況はどう捉えているか。
「コロナ禍の影響で、インバウンドを含めた海外渡航需要が消失した。弊社は、お宿の平日稼働を上げることが創業からのDNAで成り立ちである。今後2、3年は国内需要が旺盛となり、お宿の要望を満たせるフェーズとなると考えている。Go Toトラベルの再開、コロナの感染拡大といった情報にも注視しており、早めの情報キャッチ、調整、プロモーション展開をしていかなければならない」
――社長に就任して約5カ月たった。手応えは。
「昨年の4月に入社し、業界を一から勉強してきた。今年は旅行産業経営塾に通い、業界への理解を一層深めた。昨年の入社時はコロナやGo Toトラベルの対応で慌ただしかったが、2年目に入り、今後何ができるかを考えてきた。社長に就任後は、本業のBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を推進している。社内では『ビジネスプロセス最適化』とも言うが、何に注力し、何を改善すればさらに良くなるかを、見直しながら取り組んでいる。アフターコロナを見据えた準備だが、平時にも必ず効いてくるはずだ」
――具体的には。
「シニアを中心に760万人の会員を持つが、会員の分析に成長余地がある。これまでは常にお宿の方を向いていたが、現在は会員にも注目し、パーソナライズされた情報や、どういうLTV(ライフタイムバリュー)で動いているかなどを分析し、打ち手を導き出している。また、社内ではデータサイエンスグループという組織を新設した。AI分析を掛け、効率の良い会報誌の送付、収益性の高い送付手法などを研究し、実証している」
――改めて、ゆこゆこの強みとは。
「一番は、社員の人としての良さ。過去に何社か携わっているが、群を抜いて良い。営業マンは、お宿の期待に応えるべく、エリアの情報、業界のトレンドなどを提案しながら、お宿からもかわいがられている。人間力の形成は、会社のカルチャーともなっており、大きな強みとなっている。人が財産の会社であるので、コロナ禍で多くの固定費を削減したが、人件費はプライドをかけて死守した」
――他社との違いは。
「平日の集客力には自信がある。コロナ禍で団体、インバウンドが減って苦しいお宿はぜひ試してほしい。会報誌、折り込みチラシなど潤沢なプロモーションを用意できること、独自の教育されたカスタマーセンターで予約の受け付け、詳細情報の提供を行っている。プロモーション、旅行・宿泊候補者へのリーチは宿単位でするよりは効率が良く、損はさせない」
――登録件数はどこまで増やすのか。
「現在は約4千軒と契約している。数を増やすことだけでなく、既存のお宿の集客を上げて収益を増やしていきたい」
――今後、注力していきたいことは。
「現在は、余剰コストがなく筋肉質な経営体質になり、平年の6割程度でも単年黒字になるまでとなった。今後は、海外渡航がない中でアフターコロナ期に向けての足腰強化による土台作りを行うとともに、先を見据えた裏側部分のロボット化などDX化を進めていく。基本的なことは多いが、愚直に取り組むことが本業に必ず効いてくるはずだ」
――一方で課題は。
「ウィズコロナでの陰性証明、ワクチン接種証明への対応が今後どうなるかだ。安心、安全への対策は、社内で常に研究している」
――その他の取り組みがあれば。
「今年、『いい会話をしよう。』という行動規範を新しく掲げた。ゆこゆこのユニークネスが発揮できるものであり、座談会、昼休みの社内ラジオ放送、ポスターの社内掲出などでコミュニケーションが促され、心理的安全性の確保につながっている。ボトムアップで改善が繰り返されている」
――見据える取扱高は。
「以前に発表したグループ全体の旅行関連の取扱高は約265億円。これを中長期では400億円ぐらいまで伸ばしたい。われわれが狙うシニア層は唯一広がっている層でもあり、頑張れると確信している」
――目指す姿は。
「ゆこゆこの社会的意義の一番は宿泊を通じた地域振興である。ここを追求しながら、これからさらに増える高齢社会への貢献にも取り組んでいきたい」
※とくだ・わかこ=東大法学部卒。在学中に出版した「東大生が教える!超暗記術」が日韓でベストセラーに。卒業後、バックパッカーで世界52カ国を巡り、ゴールドマン・サックスに新卒入社。投資会社を経て、福岡県域ラジオ局「CROSS FM」で社長を務め経営を再建。2020年に同社に入社し、今年6月30日から現職。
【聞き手・長木利通】