【焦点課題】カンデオホテルズ 代表取締役社長 穂積輝明氏に聞く


穂積社長

唯一無二の4つ星ホテルへ

ビジネス、観光両需要を取り込む 随所に独自色、リピーター獲得に強み

 ――主な客層は。

 「主な顧客はビジネスパーソンと観光客。前者は出張時に部屋をこだわって選びたいアッパービジネスが中心。後者はご家族、カップル、グループなどさまざま。大浴場などに魅力を感じ宿泊される方が多い」

 「ビジネスの平日需要、観光の週末需要を取り込むべく、両需要のあるエリアに出店している」

 ――ハード面の特徴は。

 「ラグジュアリーホテルの雰囲気を醸し出すような館内デザインにこだわっている。ゆったりくつろげるよう、客室面積も一般のビジネスホテルより広く設計している。新店舗では大きな窓の横にソファーを置き、眺望を楽しみながらノートPCで仕事ができる空間を創出した。好評を頂戴する大浴場はリゾートプールというコンセプトで、浴槽に水中照明を設置するなどの工夫を凝らしている」

 「コアコンセプトの一つ『光り輝く』を体現するため、きらめきを感じられるよう素材の選定にもこだわる。既存のポートフォリオを生かしてより良い館内空間になるよう試行錯誤している。各施設の設計に際し、各国の5つ星ホテルなど2500棟ほどを調べた。それらの良い部分をどう取り入れるかを考えている」

 ――ソフト面、特に人材面での特徴は。

 「学歴、職歴、性別、国籍などが一切不問の採用を行っている。やる気があり、成長意欲が強いパートナー(従業員)にはどんどん大きな仕事を任せ、それを全うするプロセスで成長する姿を評価する。一方、じっくり成長したいというパートナーもいる。各人の適正に合わせた育成を行っている」

 「面接を通じ、現場の全員が『この人と仕事をしたい』と賛同したら採用する。役割分担はあれど、フラットな組織で、というのが理想だ」

 「逆ピラミッド型の組織体制で、最前線で顧客と直接向き合うアルバイトパートナーを店舗責任者が下から支える形で業務に遂行する。各店舗の責任者が活躍できるよう支援センターも設けている。仲間の推薦により昇進が決定する仕組みなので、周りからの人望が厚いパートナーが昇進していく」

 「接客マニュアルはなく、接客については現場に大きな裁量がある。『フロントに来られるお客さまの一挙手一投足を見て、各お客さまのことをおもんぱかり、ベストだと思う言葉を掛けて良い』という考えを大きな軸に接客している。現場では当日のお客さまのリストを見ながら、『どんな言葉を掛けようか』と思案を巡らせている。例えば、ホテル業界ではお客さまに対して『お疲れ様でした』は基本的にはご法度だが、当社はそれがそのお客さまにとってベストだと思ったら言って良い、と。そこで対応を褒められたら成果になり、クレームになっても私が責任を取り、責めたりはしない。こうしてパートナーが伸び伸び仕事に励む雰囲気がお客さまに伝わり、『気持ち良いね』と感じてくださり、リピーターが増えている大きな要因になっている」

 ――料理提供に注力。狙いは。

 「『出張時こそおいしいものを食べてほしい』、観光客にも『せっかく来館してもらったのだから、朝食は楽しんでほしい』との思いがあった。業界的には朝食には冷凍食材が多く使われ、最近はラグジュアリーホテルも食材勝負で、『調理』がなくなっている。当社はその逆の発想で、独自のレシピや調理法を開発し、短時間で大量に作っても作り込まれた味を出せるノウハウを蓄積してきた。当社のナイトシフトは朝食の仕込みに多くの時間を費やす。変に万人受けの味を狙わず、きちんと風味を感じるようなレシピで作るよう注力している。各館の最上階のレストランで眺望を見ながら手作りの料理を食べる体験価値を提供したい」

 ――コロナ下の業績は。

 「20年4月が昨対85%減と特に厳しかったが、全パートナーの雇用は維持すると宣言した。その後、テレワークプランの造成や、増加した連泊需要、3密回避のワークスペースとしての利用などの取り込みに尽力し、早期に回復できた」

 ――コロナ後は。

 「契約済みのホテルが全て立ち上がると5770室となり、国内外含め1万室体制を目指している」

 ――コロナ回復期のホテル業界は。

 「内需の回復期、外需の回復期に大別される。前者では地元の方が地元の施設に泊まる動きが主に見られる。ホテルステイ自体を目的とする宿泊が根付き、新たな需要として引き続き伸びると見ている。金土、土日での連泊もニューノーマル下で増え、この傾向は今後も続くと思う。後者のインバウンド復活期には、中長期的にコロナ禍前の水準まで戻るのではないか。各施設の高いデザインクオリティを生かしてコロナ禍前同様に外国からのお客さまを迎えたい」

 ――メッセージを。

 「ホテルに泊まってリフレッシュしよう、のような感覚で、宿泊そのものを目的とする宿泊需要の高まりを感じる。そんな気軽なホテル利用があっても良いと思うし、普及していってくれたらうれしい」

 

ほづみ・てるあき=1999年、京都大学大学院工学研究科修了。スペースデザインに入社し、サービスアパートメント事業やサービスオフィス事業の不動産開発およびオペレーション開発に携わる。2005年にカンデオ・ホスピタリティ・マネジメントを立ち上げ、代表取締役社長に就任。12年にはMBOによりオーナー経営者として独立、現在に至る。

【聞き手・内田誉紀】

 
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