コロナ禍での創業の狙い
負担、処理ゼロが勝機に DX化で「DTA」目指す
――昨年3月にLoco Partnersの代表を退任した。コロナ禍で再び旅行業に挑戦するがなぜか。
「退任してから多くの産業を研究した。WILL(意思)とCAN(能力)が最大になるものを探し、グルメコマースとして運営している『TASTE LOCAL』の本格展開、他領域のeコマース事業への参入、D2Cブランドの立ち上げ、宇宙、ゲノム、原子力などありとあらゆる事業を見て考えた。旅行以外の事業も見たが、結局は旅行事業がWILLもCANも一番大きいことに改めて気付いた」
――現在の旅行業の市況をどう捉えているか。
「海外旅行は、コロナ禍で消滅した数少ない産業の一つだ。また、旅行業はコロナ前からも人件費や店舗の負担、数多い処理など課題がたくさんある産業でもある。われわれは、負担、処理をゼロからチャレンジできる。また、伸びている産業に途中から参入しても、多くの恩恵は受けられない。伸びる前から始められる海外旅行に参入することはチャンスと捉えている」
――令和トラベルの名前の由来は。
「『令和時代を代表する旅行代理店を作りたい』という思いを込めて名前を決めた。レトロモダンの流れが来ており、レトロこそモダンであると考えて名付けた。もう一つの候補としては『篠塚観光』と悩んでいた(笑)」
――企業理念は。
「『新しい旅行をデザインする』を掲げている。新しい旅行をどんどん作っていく。ツアーの形や料金体系、飛行機予約の使い勝手など、アプリで非常に使いやすいものをデザイン、構築していく。私を含めてITに強いメンバーがそろった。その強みと旅行予約をクロスさせ、従来の旅行会社ではできないことを実現する」
――海外旅行予約に挑戦するが、今後のプランは。
「資金調達を行い、コロナの状況を見ながら夏ごろにパッケージツアーやホテルの予約がしやすい、サービスをリリースする予定だ。まず、キャンペーンを企画、展開し、サービスの利用、認知度向上を図る。また、安全管理体制も重要だ。ツアーでのトラブルなどに対応できるサポート体制を最初から構築する。その先はコロナ禍の影響もあり、確定した事実はまだない」
――DX化を打ち出しているが、デジタルを旅行にどう組み込むのか。
「まず、どこよりも絶対的に使いやすいアプリが存在することになる。予約までのフローがすごく短いもの、予約がしやすいものを開発している。裏側のデザインとして、従来のサービスでは人が介在していたものを自動化する予定だ」
――連続起業となる。Reluxとどう違いを出すのか。
「国内でなく海外旅行を販売することから、根本的に異なる。また、ラグジュアリートラベルでもない。例えば、デジタル化で中間コストを落とし、アジアを3泊1万9800円で販売するなど、低価格で高品質な旅行を提供していく。ハワイ、ヨーロッパも手掛けていく。服飾業界で低価格、高品質を実現したユニクロの旅行版をイメージしてほしい。価格が安く、予約も含めて使いやすいアプリを提供する旅行会社という世界観を構築し、市場に浸透させる。Reluxとの提携は考えていない」
――低価格高品質で市場を寡占し、ユーザーが付いた中で価格を上げるのか。
「基本的にはそう考えている」
――連続起業でのプレッシャーは。
「それはあるし、周囲からの期待度も高い。今は、プレッシャーを楽しむなど、前向きに捉えている」
――その他のプランは。
「海外旅行手配を立ち上げることに集中し、旅行領域の中で事業を展開することを考えている。将来は、海外OTAのような世界中のホテル予約や、飛行機予約などにも挑戦する」
――リアル、OTAとも違う気がする。立ち位置は。
「われわれは旅行会社であり、デジタルを駆使するテックカンパニー、IT企業でもある。リアル、OTAとは異なるデジタル化された、その次の概念となるデジタルトラベルエージェンシー(DTA)を目指す。業界に乗り込み全てをぶっ壊すということは考えていない。皆で協力しながら海外旅行マーケットの拡大に貢献したい」
――今の会社の規模は。
「今は10人ぐらいで、今年1年で30人ぐらいにする予定だ」
――求める人材像は。
「挑戦意欲が高く、海外旅行が好きな人。また、業界経験は必要としておらず、一つの領域で成果を出していることも重視している」
――中長期でのプラン、取扱高の目標は。
「5年で流通額1千億という目標を掲げている。Reluxは、公表している数値でリリースから6年で200億円ぐらいだった。その5倍ぐらいのサイズを早々に作り上げ、IPOを実現する。上場は、旅行者の信頼にもつながる」
※しのづか・たかや=リクルートに新卒で入社。旅行カンパニーに配属。2011年9月にLoco Partnersを創業し、代表取締役に就任。21年4月に同社を創業。
【聞き手・長木利通】