選ばれ続けるホテルに
来春「メズム東京」開業 仏留学制度でシェフ育成
――日本ホテルとJR東日本ホテルズとの関係は。
「日本ホテルはJR東日本の100%子会社。JR東日本ホテルズは現在50ホテル、7616室を展開しており、その中で主に首都圏のホテルを当社が運営している。具体的には32ホテル、5324室を経営している」
――複数のホテルブランドを展開している。
「国の重要文化財、東京駅丸の内駅舎内にある東京ステーションホテルは『クラシックラグジュアリー』の位置付け。ブランドとしては、フルサービス型の『ホテルメトロポリタン』、宿泊特化型の『JR東日本ホテルメッツ』、アーバンリゾートホテルの『ホテルドリームゲート舞浜』、自然を満喫できるリゾート型ホテル『ホテルファミリーオ、フォルクローロ』がある。メトロポリタンホテルズは、JR東日本ホテルズとして12軒あり、うち6軒が日本ホテルの運営だ」
「来年4月27日、新たにアーバンラグジュアリーの『メズム東京、オートグラフ コレクション』をJR東日本グループが開発する『ウォーターズ竹芝』の高層棟に開業する。世界最大のホテルチェーンであるマリオット・インターナショナルのプレミアムブランド『オートグラフ コレクション』のフランチャイズホテルとしてグローバル集客にも注力する。オートグラフは署名の意味。特定ブランドで均一化されず、個々の名称で運営される高級ホテルを集めたカテゴリーだ。マリオットが求める基準は満たしつつ、コンセプトは当社が独自で構築した。メズムは、魅了するという意味のメズマライズから取った。お客さまの五感を魅了する全てが本物のサービスを提供する。総料理長にはプロスペール・モンタニェ国際料理コンクール優勝者の隈元香己が就任する」
――会長をされている「JRホテルグループ」で毎年実施している料理コンテストは、この夏で17回目を迎えた。
「全国のJR系ホテル68軒が加盟するJRホテルグループという組織で実施している競技会で、40歳以下の調理担当社員が腕を競う。ホテルメトロポリタンエドモントの開業時から活躍して多くのシェフを育てた、当社の中村勝宏統括名誉総料理長も審査員を務めている。最高レベルの食を提供するためには優秀なシェフを育てなければならない。当社では毎年、調理部門の若い社員を半年間、フランスの星付きレストランに派遣し、料理の勉強をさせている。留学制度は07年に開始し、これまで13名が渡仏した。現在は2名が留学中で、両名とも料理コンテスト優勝者の女性。実は、JR東日本のクルーズトレイン『TRAIN SUITE四季島』の総料理長も留学経験者だ」
――「JRホテルメンバーズ」という会員プログラムもある。
「東日本、東海、西日本、九州のJR系ホテルがサービス対象ホテルとなっている。スイカ、パスモなどの交通系ICカードが会員証になる。宿泊割引、ポイント還元、レイトチェックアウトなどの特典がある」
――2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、新規ホテル出店を加速している。
「10月7日に開業したJR東日本ホテルメッツ秋葉原を皮切りに五輪開始までに7ホテルを開業する。全国的なホテル開業ラッシュの中で、私たちは選ばれ続けるホテルにならなければならない。そのために、お客さまの声や口コミ情報の全てを集約、分析し、各ホテルが目標設定をした上で顧客満足度を高めていく取り組みを始めた。またホテルのブランドコンセプトをお客さまに明確に打ち出し、その奥にあるブランドプロポジション(定義)を明文化してスタッフに浸透させている。例えば、メトロポリタンホテルズのブランドコンセプトは『やすらぎと華やぎが出会う場所』、プロポジションは『人・食・街、そして文化と触れ合い未知なる息吹を体感することで気持ちが華やぐホテル』。JR東日本ホテルメッツのブランドコンセプトは『上質が息づく。』、プロポジションは『飾らない上質につつまれ心と身体がリセットされるホテル』とした。スタッフがこれらを体現する努力を続け、お客さまに選んでいただけるホテルにしたい」
さとみ・まさゆき=1955年生まれ。神奈川県出身。80年日本国有鉄道入社。87年東日本旅客鉄道入社。横浜支社総務部長、総務部次長などを経て、2008年取締役総務部長就任。10年取締役仙台支社長、13年JTBパブリッシング代表取締役社長を歴任し、17年6月日本ホテル代表取締役社長に就任。JR東日本ホテルズ本部長。JRホテルグループ会長。
【聞き手・江口英一】