特許庁・地域団体商標制度とは
地域活性化の起爆剤に ブランド保護へ活用を
――地域団体商標制度とは。
「制度ができて13年目となる。地域の振興、支援を目的とし、一定の地域で周知性があれば地域ブランドとして用いられることの多い『地名』と『商品(サービス)名』からなる商標を登録できる。以前は、全国的に周知性がないとそのような商標は登録できず、例えば、北海道の夕張メロンのように、全国的に有名なブランドと認められないと商標登録できなかった。地域団体商標制度が創設されたことにより、全国的に周知性を獲得する前の地域ブランドであっても、商標登録できるようになった。地域ブランドの認知や価値向上など、地域活性化の起爆剤として期待されている。なお、権利者になれるのは、(1)事業協同組合などの特別の法律により設立された組合(2)商工会(3)商工会議所(4)NPO法人(5)これらに相当する外国の法人―に限られる」
――地域団体商標制度を取得するメリットは。
「法的な効果は通常の商標と同様で、登録されると権利者以外はその名称を使うことができない。地域産品の保護につながることが一番大きなメリットだ。また、他地域との差別化や取引における信頼度向上にもつながる。このほか、権利者からは名称の利用希望による組合員の増加や、地域団体商標の取得の過程を通して地域の結束が強まったなどの声を聞いている」
――観光関連における登録数、活用例は。
「温泉が一番多く、46の温泉地が登録されている(8月1日時点)。観光関連の登録数も増えており、『能登丼』などご当地グルメや、『かっぱ橋道具街』などの商店街、『一宮モーニング』といった食事サービスも登録されている。活用例としては、地域ブランド同士でコラボ商品の開発や、PRを行ったり、地域団体商標を一つのきっかけに活動の幅を広げている例もある。島根県の『玉造温泉』は、広島県の『尾道帆布』とコラボレーションを行い、帆布製のポーチに温泉水を使用した化粧品を入れて販売するなど、他地域ブランドとのコラボレーションによるブランド力の向上に取り組んでいる。他には、愛知県の『豊橋カレーうどん』のように、新たにご当地グルメを売り出し、今では全国から客が訪れている成功例もある」
――取得する場合は。
「特許庁の地域ブランド推進室や知財総合支援窓口にぜひ相談してほしい。地域ブランド推進室では、メールや電話での相談のほか、全国に出向き無料で地域団体商標制度の説明やセミナーも行っている。知財総合支援窓口は、全国47都道府県に設置されており、無料で弁理士やブランド専門家などに相談できる窓口だ。出願から登録までは平均期間で15・7カ月となっている。自力で出願する団体より、知財の専門家である弁理士が代理人となって出願する団体が多い」
――取得に当たりポイントなどがあれば。
「大変なのは書類の書き方よりも証拠集めだ。一番のポイントは周知性。一定程度の地域、県域レベルである程度知られていないと取得できない。短期間でも集中的に周知を行い、有名になった事実があれば周知性があるとみなされる。周知性の証拠としては、マスコミによる取材記事、商品(サービス)名を使用して出展したイベントの写真、発注書、納品書などがある」
――地域団体商標制度の周知への取り組みは。
「特許庁としてこれまでは出願された地域団体商標を審査し、登録するまでが主な役割であったが、現在は地域団体商標の活用を支援することが日本経済の発展につながると捉え、制度の普及や登録後の活用を支援する取り組みを実施している。一つは『地域団体商標ガイドブック』の作成。これは、地域団体商標を活用している団体の最新事例や、特許庁の支援策などを掲載している冊子である。地域ブランド関係団体に配布しているほか、希望者に無料で配布している。もう一つは『地域ブランド総選挙』の実施。総選挙は、学生が地域団体商標権者などを取材し、取材に基づいて得た地域の商品やサービスの魅力をSNSで発信するとともに、今後の新商品や新たなビジネスプランなどを競うもの。他にも、地域団体商標の海外展開を支援するため、海外展開時におけるブランド戦略の策定やプロモーション促進支援も行っている」
――地域団体商標マークとは。
「昨年できたもので、特許庁の地域団体商標として登録された証となる。国が認めたものとして、宣伝などで活用してもらいたい」
――観光業界へ一言。
「『商店街』『祭り』『花火大会』といった分野でも地域団体商標を取得することは可能だ。地域の大切なブランドを保護するツールとして、地域団体商標制度を活用してほしい」
※たかはし・なおひこ=1988年4月特許庁入庁(会計課)。総務部普及支援課課長補佐(地域調整班長)、審査業務部審査業務課登録室室長補佐(調整班長)などを歴任。2017年7月に総務部普及支援課課長補佐(総括班長)。今年4月から現職。
【長木利通】