トリップドットコムの日本戦略
テレビCMに大河俳優起用 世界中でお客さま第一主義
――トリップドットコムは、2月3日から23日までテレビCMを展開した。メインキャラクター「ミスタートリップ」に、現在放送中のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で主人公の明智光秀を演じている人気俳優、長谷川博己さんを起用して話題となった。テレビCMは、世界三大OTAグループのうちの2社、エクスペディアとブッキングドットコムに続く動きだ。
「世界最大級OTAのトリップドットコムは、中国内向けには『シートリップ』、それ以外の世界各国では『トリップドットコム』のブランドでオンライン旅行販売ビジネスを展開している。当社は、先ほどおっしゃった欧米系の2社よりも日本では後発。日本でのさらなる認知度の向上にはテレビCMが最適だと判断した」
――なぜ長谷川さんを起用したのか。
「主力ユーザーである30~40代の男女を中心に幅広い層で知名度と好感度が高い俳優をリサーチし、数名挙がった候補者の中から選んだ」
――最後の決め手は。
「見ている人に信頼感を抱かせるキャラクターだからだ。私自身が、朝のNHKの連ドラが好きで、『まんぷく』に出演していた長谷川さんのファンだったこともある(笑)」
――CMの放映開始が新型コロナウイルスの拡大している時期と偶然重なってしまった。
「CMを中止にすべきかどうか、当然社内で検討したが、こんな時期だからこそ明るくいこうと、予定通りの放映に踏み切った」
――CM効果は実感できているか。
「当社に限らず、今は観光業界全体が苦難の時期なので、まだ営業数字には表れていない。ただ、宿泊施設、交通機関などの取引先からの評判はよい。社内のモチベーションも上がった。ブランド価値の向上により、人材の新規採用にも良い影響が出てくるものと期待している」
「第1弾CMでは『会員数4億旅人突破』と『世界最大級の旅行サイト』をアピールした。第2弾CMも撮影済みで、ゴールデンウイーク明けの放映開始を予定している。長谷川さん自身の発案による指を鳴らすアクションも取り入れた。ホテル、航空券、ツアーなどの予約がワンストップで可能なサイトであることを強調する内容だ」
――トリップドットコムグループは、日本では単純にOTAに分類されているが、中国国内では7千店舗を展開し、世界ではコールセンター要員が1万7千人いると聞いた。
「日本でもコールセンターを2018年11月28日に開設し、2019年11月1日から24時間対応にしている。2カ国語以上を話す日本人オペレーターを100人弱配置している。お客さまを第一に考えるというのが私たちの創業時からの姿勢だ」
――なぜ日本人なのか。
「コールセンターは、正式にはカスタマーサポートセンターという名称。日本のお客さまが安心して旅行を楽しめるよう、日本人に寄り添ったサービスを提供するのが役割だ。キャンセル、払い戻し、Q&Aなどに電話で対応するが、日本語の細かいニュアンスをくみ取るのは、母国語が日本語の人でないと難しいからだ」
――日本語サイトのローカライズにもこだわっている。
「2015年に日本のゼネラルマネージャー(社長)に就任して以来、ずっと改修を続け、UI/UX(ユーザー・インターフェ―ス/ユーザー・エクスペリエンス)を進化させてきた。例えば、漢字のフォントやサイトの色使いなどの好みは、日本人と中国人では異なる。日本市場の状況や要望を、上海本社の開発部門に細かく伝え、説得し、日本人にとって一番使いやすい旅行サイトになるように努力している」
――日本語サイトの取扱高、伸び率はどのくらいか。
「いまここで具体的な数字を開示することはできないのだが、日本語サイトの取扱高は、サイト開設の2013年以来、毎年3桁台の伸びを続けている」
――毎年数倍になっているということか。
「そうだ。毎年飛躍的に伸びている。今後も一層発展するように努力していきたい」
よしはら・せいごう(ピーター吉原)=1968年生まれ、51歳。2015年12月から現職。「トリップドットコム」ブランドの日本での認知度向上と日本語サイト・アプリの利用促進を率いる。正式な肩書は、シートリップエアチケッティングジャパン社長。前職は、エクスペディアグループのホテル予約サイト「ホテルズドットコム」の日本・韓国担当マーケティング・リージョナルディレクター。
【聞き手・江口英一】