【焦点2021】東京オリパラとインバウンド 編集部 内井高弘


観光立国の行く末占う

 2020年の大きな出来事としては、コロナ禍で東京五輪・パラリンピック(オリパラ)が21年7月に延期されたことやインバウンドの激減などが挙げられるだろう。21年にこの二つがどうなるのか、観光立国の行く末を占う意味で注目したい。

 19年11月中旬、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が日本を訪れた。菅義偉首相と会談し、オリパラの会場に観客を入れて開催することに自信を見せた。バッハ会長はまた、来日を前にした記者会見で「中止は議論しない」と表明しており、開催に並々ならぬ意欲を示している。

 NHKによると、12月中旬に実施した世論調査(1249人が回答)でオリパラの開催についてどう思うかを聞いたところ、「開催すべき」が27%、「中止すべき」が32%、「さらに延期すべき」が31%となり、「中止すべき」が「開催すべき」を上回った。気になる調査結果だ。

 鍵を握るのはワクチンの実用化と普及だろう。日本はもちろん、世界に広く行き渡り、コロナをある程度抑え込めれば、視界も開ける。英国など、一部の国ではワクチンの接種も始まっており、予防効果が期待されるところだ。

 オリパラがインバウンド回復の試金石になる、との見方は強い。仮にオリパラで一定規模のインバウンドを開催期間の中で受け入れられる環境を実現できれば、「日本は安全、観光に行っても問題はない」という認識が広がりはしないだろうか。

 インバウンド推進は菅首相の肝いり政策で、政府はコロナ後も「30年に訪日客6千万人」の目標を堅持する。首相はかつて、「人類がウイルスに打ち勝った証しとして(オリパラを)開催する決意だ。安全安心な大会を実現する」と述べている。

 観光戦略実行推進会議は12月3日、「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」を決めた。インバウンドについては「感染状況が落ち着いている国・地域から、主催者がビジネストラックに準じた防疫措置を徹底した形での、管理された小規模分散型パックツアーを試行的に実施する」方針を示した。実施時期や対象地域は国内外の感染状況を見て決めるようだ。

 オリパラが成功し、インバウンド回復の契機となることを期待したい…。

 
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