上半期事業の振り替えや新規事業を積極的に実施 リピーターは家族という考え方
着地型日本版DMOの成功モデルとして各地のDMOや経済団体、大学の視察が増加している下呂温泉(岐阜県下呂市)。今年度は昨年度末から大きな影響を及ぼした新型コロナウィルスの下呂温泉への状況と、2011年から実践している観光マーケティングと、今年度の日本版DMO法人としての取り組みを瀧康洋・下呂温泉観光協会長に聞いた。
――今年度は新型コロナウィルスの影響があります。宿泊客の状況は
瀧 今年度は全国の観光地と似たような状況にあると考えている。下呂温泉はDMOとしてマーケティングを継続的に行っており、国内では方面や移動手段の傾向を常に把握している。外国人観光客も同様で特に宿泊客数に対してシェアもインバウンド頼みにならないようにしてきた。同時にビジネスホテルタイプの供給過多にも警鐘を鳴らしてきた。結果として下呂温泉の宿泊客に占めるインバウンドの割合は約14%に留めており、コントロールできていると考えている。今回の新型コロナウィルスの影響は観光客数全体に影響を及ぼしている。月ごと宿泊客の変化があるので、実際の宿泊客数と減少比率の両方を見る必要がある。4月から7月末まで国内宿泊数は7万2364人で前年比25・1%。約75%減少している。外国人宿泊客数は54人で前年比0.1%。99.9%の減少だ。国内は5月が最も悪かったが6月前年比33%、7月前年比49%、8月は50%まで回復している。団体客の減少が顕著であること、方面は従来の傾向通り、岐阜県内と愛知県など近隣からの宿泊客が多い。今年度も同様の傾向だが関西、首都圏からの宿泊客が落ちている。この2エリアの落ち込みがそのまま国内宿泊数の減少に繋がっている。この2エリアの宿泊客が回復すれば従来の宿泊客数に回復するという目途も立っている。コロナの影響は移動手段にも大きな影響を及ぼしている。JRや大型バスの利用が減っており、マイカーなど自動車利用が増加している。宿泊全体の影響を及ぼしているとはいえ、国内客は安定してきており、回復傾向がはっきりと見える。誘客の施策も効果が期待できる。インバウンドは海外渡航の制限の緩和や正常化が待たれるところだ。宿泊客のデータと別に下呂温泉観光協会のホームページや動画配信へのアクセスが伸びている。これは、旅行はしたいが自粛のために出かけることができない層が見ていてくれているのだと思う。ウェブのマーケティングの効果が通常より高まることが期待できるが、少しでも下呂温泉の写真や動画でストレスの軽減につながってもらえればと思っている。
――今年度のDMOの取り組みは
瀧 下呂温泉の食、観光施設、着地型体験商品を備えたガイドブック事業、宿泊施設と着地型観光事業者の連携事業、着地型体験PR動画事業、宿泊施設等とのデータ収集・分析事業、スイーツ活用事業、SDGs事業認定・エコツーリズム推進事業などを実施する。この事業に含まれないが夏の大型イベントである下呂温泉まつりの中止に伴って、開催されなかった下呂温泉花火ミュージカルの予算を「下呂温泉花火物語」に振り替えた。夏の花火を楽しみにしていた層に下呂温泉で、秋冬の花火を楽しんでもらえる企画だ。エコツーリズムに関しては「全国エコツーリズム大会in下呂市」が11月15日と16日に開催される。エコツーリズムの全国大会を誘致できたことも大きいがコロナ禍の中、MICEを開催できる意義も大きい。また何かと注目を集めるSDGs事業については今年、民間認証ながら、SDGsの認証を収得する。持続可能な観光地戦略を進めたカタチだ。