【特集】ユニバーサルツーリズムに取り組む兵庫県


全国初のUT条例 推進施策を多角的に展開

 兵庫県は、高齢者や障害者など、誰もが気兼ねなく旅行を楽しめる「ユニバーサルツーリズム」(UT)の推進に取り組んでいる。全国に先駆けて「UT推進条例」を制定。UTの推進施策を多角的に展開している。

 UT推進条例(高齢者、障害者等が円滑に旅行することができる環境の整備に関する条例)は、少子高齢化の進行や、誰一人取り残さない社会の実現に向けた機運の高まり、障害者差別解消法の改正、さらには2025年の大阪・関西万博の開催など、昨今の社会情勢を背景に2023年4月1日に施行された。

 条例では「行きたいところに旅行できる環境の整備」を目指すべき姿とし、「接遇の向上等による受け入れ体制の充実」「高齢者・障害者等が必要な情報等を得られる機会の確保」「UTの推進に関する機運醸成」に、市町、観光関連事業者、支援団体等と連携しながら取り組むこととしている。

 UTに特化した条例は全国初という。

 条例に基づく具体的取り組みを「人づくり」「宿・施設づくり」「エリアづくり」の三つの観点から見てみる。

 ■人づくり
【ひょうごUTコンシェルジュの育成】
 高齢者・障害者等からの相談に対応するなど、UTの普及促進を担う人材を育成する。
芸術文化観光専門職大学(兵庫県豊岡市)との連携のもと、半年にわたるプログラムを実施し、毎年20名程度をコンシェルジュとして認定している。

【UTおもてなし研修】
 県内の観光産業(宿泊施設、観光施設、飲食店、NPO等)の現場で働く従業員・スタッフを対象に、高齢者・障害者等を迎え入れる際の接遇・ホスピタリティを学ぶ研修を実施。
2024年度は座学と簡単な実技から学ぶ実践的な研修を県内各地域で実施した。

 ■宿・施設づくり
【「ひょうごユニバーサルなお宿」宣言・登録制度】
 UTの推進に積極的に取り組むことを宣言した宿泊施設に県が整備などの経費を支援し、登録、情報発信する制度。

 まず、UTに取り組むことを宣言する宿(宣言施設)を募集。県が宿に対してUTの推進に必要なソフト対策経費、ハード整備経費を支援する。
県が定める基準を満たす宿を登録(登録施設)の上、宣言・登録施設の情報を県の公式観光サイト「HYOGO!ナビ」内の特設サイトで発信。それぞれの取り組み内容を障害種別ごとに細かく発信する。

 ユニバーサルなお宿特設サイトでは、宿の所在エリアや対応可能な取り組み内容(ユニバーサルルームの有無、車椅子やシャワーチェア等の備品の貸し出しの有無、筆談対応の可否など)から、該当する宿泊施設を検索することが可能。利用者のニーズに合った宿泊施設探しをサポートしている。

 同制度の内容と宿泊施設(宣言施設131、うち登録施設66=2月末現在)はQRコードから閲覧できる

 

ひょうごユニバーサルな観光地づくりモデル事業

■エリアづくり
【ひょうごユニバーサルな観光地づくりモデル事業】
 UTに積極的に取り組む観光地を公募の上、選定し、県がモデル的に支援。期間は最大2年間で、「エリア内の観光関連施設のバリアフリー化」「車椅子や筆談タブレットなど、UT推進に資する物品の購入」「地域所有の巡回バス・ユニバーサルデザインタクシーの導入」などについて、1地区当たり年に最大1600万円を補助する。

 このほど、城崎温泉地区、湯村温泉地区、丹波篠山市の3地区が「ひょうごユニバーサルな観光地」に選定された。

 

城崎温泉地区

 テーマは「『外湯めぐり』と『そぞろ歩き』のユニバーサル化」。

 温泉街に七つの外湯があり、これら外湯めぐりと風情ある街のそぞろ歩きを楽しめる城崎温泉は、「まち全体が一つの大きな宿」をコンセプトに掲げる。誰もが気軽に外湯めぐりとそぞろ歩きを楽しめるよう、ソフト・ハード両面でのユニバーサル化を予定している。

 外湯の一つ「地蔵湯」のエントランスをスロープや手すりの設置、床板の滑りやすさの解消などバリアフリー改修する。

 外湯「柳湯」は足湯を改修。底上げやベンチの高さの変更などでバリアフリー化する。

 JR城崎温泉駅と温泉街の宿を結ぶ巡回バスのユニバーサル化も予定。バスは反転式スロープ板、ニーリング(車体を下げて乗降しやすくする)機能を備えた福祉車両とする。

 そのほか、電動車椅子の貸し出しやユニバーサル情報の提供などを行うUTヘルプサービス機能の構築や、外湯におけるユニバーサルデザインボトル(触覚識別できるシャンプーボトル)の導入などにも取り組む。

 

湯村温泉地区

 「全ての人に優しいユニバーサルな足湯・湯がき等の整備」を進める。

 泉温98度、毎分470リットルと、高温で多くの湯量を湧出する湯村温泉の元湯「荒湯」。天然の足湯や、温泉卵や野菜をゆでる「湯がき」体験を観光客が楽しんでいる。これ
らの体験をさらに多くの人に楽しんでもらう。

 車椅子で安全に湯がき体験ができる「ユニバーサル湯がき湯つぼ」を設置。

 温泉街散策の休憩に最適な「ポケットパーク」に「ユニバーサル足湯」を新設するほか、地元の人々にも愛される公衆浴場「薬師湯」など温泉街にある数カ所の足湯も車椅子でも利用できるよう改修予定。

 そのほか、筆談タブレットや車椅子けん引装置の導入や、ユニバーサルツーリズム研修の実施など、ソフト面の取り組みも進める。

 

丹波篠山地区

 城下町として栄えた丹波篠山は、国指定史跡の篠山城跡や国選定重要伝統的建造物群保存地区の「篠山城下町地区」など歴史を感じさせる名所が多い。

 同市は「観光案内所等のユニバーサル化とおもてなしの心の醸成」をテーマに、市全域でソフト・ハード両面でのユニバーサル化を進める。

 篠山城跡三の丸広場と河原町駐車場の公衆トイレを全ての人が使いやすいように洋式化。

 観光案内所は車椅子でも利用しやすいよう、ローカウンターの設置や玄関扉の内外両開きへの改修を進める。

 観光に関わる人々への「おもてなし研修」や「車椅子乗車体験会」の実施でもてなしの心のさらなる醸成を図る。

 そのほか、車椅子などの利用者に向けたユニバーサルマップの作成や、ユニバーサル案内サインの整備、ユニバーサルな観光動線モニターツアーの実施などを予定している。

 

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