四川省の観光魅力を日本に向けPR 中国駐東京観光代表処


雅安碧峰峡基地のパンダたち

各地で開発進む、変わり続ける観光地へ

 中国駐東京観光代表処は、中国大陸全土の魅力をさまざまな角度で分析し、日本に向けてアピールしている。6月11~16日には、日本生まれのパンダ「シャンシャン」の7歳の誕生日を中国・四川省で祝い、同省の観光地を巡るツアー「『你好(ニーハオ)!中国』四川省の魅力とシャンシャン生誕記念視察FAMツアー」を日本の旅行会社、メディア、出版業界、フリーライター、インフルエンサー向けに催行した。過去に大きな震災から復興を遂げた四川省は、都市機能や交通網の整備だけでなく、観光分野への投資も積極的に行っている。日本でも大人気のジャイアントパンダの故郷や、中国を代表する数々の世界遺産、世界的に高評価を得ている中国茶の名産地、『三国志』に登場する劉備や諸葛亮のゆかりの地など、近年観光開発が活発な四川省の観光魅力について紹介する。

7歳の誕生日を迎えたシャンシャン

四川省はどんな場所?

 四川省は、中国南西部の内陸に位置する省の一つ。青海チベット高原東端と四川盆地にまたがっており、北西部を青海省、北は甘粛省と陝西省、東は重慶市、南は貴州省と雲南省に接している。

 総面積は48.5万平方キロメートルで、中国国内で5番目に大きな省となっている。その広大な土地には、漢民族をはじめとして、イ族、チベット族、チャン族など、さまざまな民族が暮らしている。人口の95%は漢民族が占めるが、北部・西部には先述の少数民族が多数暮らしており、省内には各民族の自治州も存在する。

 四川省は古くから風光明媚な土地として知られており、その美しさから「風景省」という美称もつけられているほどだ。世界自然遺産にも登録されている北西部の「九寨溝」「黄龍」や、同じく南部にある世界遺産の「峨眉山」「楽山大仏」などは日本からの観光客を多く魅了してきた。こうした雄大な自然を有する四川省には世界のパンダの85%が生息しており、「ジャイアントパンダの故郷」にもなっている。

 自然環境のみならず、四川省は文化的・歴史的にも特筆すべき点が多い。四川省は古くから歴史の舞台にたびたび登場しており、特に『三国志』に登場する一国「蜀」の首都が成都だったことは日本でも有名だろう。蜀の指導者である劉備や、宰相の諸葛亮など数々の偉人を祀る「武侯祠」などは、歴史好きな人にはたまらないスポットだ。

 こうしたさまざまな魅力が多い四川省だが、日本と同じように数々の自然災害を経験している。2008年に発生した四川・汶川大地震や2017年の九寨溝地震では甚大な被害が出ており、世界的に報道されていたことは記憶に新しい。四川省はこうした激甚災害に屈することなくたびたび復活を遂げており、現在でも当時の教訓を生かして自然と共生した観光地開発を行っている。こうした取り組みにより、四川省は中国の観光地等級制度で上級ランクに指定される観光地が多く、近年観光集客にも注力している。

 一度には語りつくせない四川省の魅力を、今回は「パンダ」「自然」「茶文化」「歴史」「ショッピング」に分けてまとめた。

観光地にもさまざまなランクが… 中国の観光地等級制度

 中国には、中国文化と観光部が定める独自の観光地等級が存在する。A(最低)~5A(最高)の5段階形式になっており、観光地の重要性、安全性、利便性、衛生面などを総合的に勘案して決定される。四川省の最高ランク観光地は、本記事で紹介している各世界遺産や雅安市碧峰峡のパンダ保護研究センターをはじめ、さまざまな景勝地が登録されている。

【パンダ】帰国したアイドルたちが暮らすパンダの故郷

 四川省には、ジャイアントパンダの研究・保護施設が5施設ある。ここでは、特に四川省中心部からアクセスしやすい2施設を紹介する。

●中国ジャイアントパンダ保護研究センター雅安碧峰峡基地
 雅安市街から18キロ、成都市から150キロ離れた碧峰峡の山岳地帯に広がる国家4A級観光地。現在約60頭のジャイアントパンダを飼育しており、ジャイアントパンダの飼育や繁殖、希少野生動物の保護、研究活動などを総合的に行う、四川省内でも有数の研究基地となっている。基地内には、パンダの様子を見られるエリアに加え、パンダの生態について学習できる展示コーナーや土産物店が点在しており、広い基地内は小型の乗り合いバスで周遊できる。

 同基地には、日本生まれのパンダ「シャンシャン」が暮らしており、世界中から訪れるファンを魅了している。今年の6月12日の誕生日には、日本から多くのファンが駆け付けた。日本国内でのパンダ見学はいささか慌ただしい印象があるが、同基地では、シャンシャンをはじめとしたさまざまなパンダがのんびり暮らしている様子をじっくり見学できる。

シャンシャン
 2017年6月12日、東京都の恩賜上野動物園で生まれる。1988年6月23日、同園で生まれたオスのジャイアントパンダ・ユウユウ以来、29年ぶりに無事に成長したパンダで、2023年2月まで日本で暮らした。同年2月21日に四川省に帰国したが、今でも日本国内で爆発的な人気を誇り、帰国日には日本のファンが成田空港まで駆け付けたほど。お転婆だが繊細な性格で、日本のファンの間では「姫」と呼ばれているという。大好物はりんごとタケノコ、嫌いな食べ物はニンジン。

雅安碧峰峡基地のパンダたち

●成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地
 こちらも四川省内の有名なパンダ見学スポットだ。成都北部近郊に位置する観光スポットで、ジャイアントパンダやレッサーパンダ、白鳥などの動物を飼育している。同基地には2023年に日本のアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)から帰国した双子のパンダ「桜浜(おうひん)」「桃浜(とうひん)」が暮らしている。屋外展示だけでなく屋内展示も充実しており、パンダを見下ろす形で見学できる展示構造は世界でも珍しいという。同基地も小型乗り合いバスで移動できる。

さまざまなパンダのかわいらしい一面を見られる

園内周遊用の小型乗り合いバス

【自然】整備が進む、高山地帯の神秘的な湖沼群

●黄龍
 四川省北西部のアバチベット族・チャン族自治州松藩県にある、国家5A級観光地。世界で最大規模かつ最も保存状態の良いカルスト地形となっており、景区内には約3400もの湖沼群が存在する。渓谷を流れる水が巨大な龍の姿に見えることから、黄龍と呼ばれるようになった。

 黄龍は高いところから低いところへ水が流れる棚田状になっている。中でも最も有名な見どころは、「五彩池(ごさいち)」だろう。五彩池があるエリアは標高3900メートルを超えており、中国唯一の高原湿地帯となっている。

 五彩池がコバルトブルーに輝いているのは、太陽光の反射光のうち、特に青い光が人間の目に強く届くためそのように見えるといわれている。常に青く見られるわけではなく、水や空気の透明度、池畔の森の色や空の色、太陽の高さや光量によって変化する。

 黄龍はアクセスしやすいよう近年整備が進んでおり、山麓の駐車場からロープウェイに約10分乗車し、山頂駅から電気カートで約5分移動すると到着する。降りた場所から約40分歩くと、五彩池に到着する。

 多くの来訪者を魅了する五彩池だが、徒歩での散策時の高山病リスクを軽減するため、酸素ボンベの携行が推奨されている。天候も変わりやすく、昼夜の寒暖差が激しい。夏季でも最低気温が10度を下回ることもあるため、観光する際は厚手のコートを持っていくのがよいだろう。

コバルトブルーの反射が美しい黄龍の「五彩池」

●九寨溝
 九寨溝は四川省北部に位置する、標高4800メートル級の山々に囲まれた峡谷地帯で、黄龍と同じく世界自然遺産に登録されている国家5A級観光地。九寨溝は「九つの小さな村がある渓谷」という意味で、周辺には古くからチベット民族が暮らしてきた。9村のうち、六つの村は現存していないが、残る3村には今でも約7千人のチベット民族が暮らしている。

 九寨溝には大小114の湖沼や瀑布が50キロにわたり連なって点在している。中でも「箭竹海(せんちくかい)」「熊猫海(くまねこかい)」「五花海(ごかかい)」「鏡海(きょうかい)」「珍珠灘(ちんじゅなだ)瀑布」「諾日朗(だくにちろう)瀑布」などが有名だ。季節ごとにさまざまな絶景が楽しめることから「童話の世界」「水景の王様」「現世の佳境」と呼ばれている。いずれの湖沼も鮮やかな青色が特徴で、日本の似ている観光地で例えるならば、山梨県の「忍野八海」が該当するだろう。

特に高い透明度が人気の五花海

珍珠灘瀑布。中国ドラマのロケ地にもなった

 四川省の代表的な自然観光のスポットとして知られる九寨溝だが、2017年8月8日にはマグニチュード7.0を記録した九寨溝地震により甚大な被害が生じた。中でも地震の大きさを物語るスポットが「8.8石」だ。揺れの影響で大きな地滑りが発生し、標高2654メートルの山の上から高さ9メートル、522トンにもなる巨大な岩石が272メートル下の峡谷に落石した。自然の力の脅威を伝えるスポットとして現在も遊歩道の脇に残されている。

巨大な落石「8.8石」

 九寨溝は震災から3年後に完全復興を果たし、今では道路や交通が整備された状態となっている。成都市から約400キロ離れているため、かつては飛行機か高速バスで向かう必要があったが、2023年11月末に黄龍・九寨溝の手前の町「鎮江関」まで高速鉄道が開通。成都市内からおよそ1時間半で九寨溝周辺部まで到達できるようになった。今年の秋頃には、さらに九寨溝近辺まで延伸開業する予定で、今後ますますアクセスが容易になるだろう。

終点の鎮江関駅

【茶文化】皇帝に献上した最高品種の名産地

 雅安市にある蒙頂山は、四川省の有名な茶の名産地だ。中国で採れる茶は主に「緑茶」「紅茶」「白茶」「ウーロン茶」「ジャスミン茶」「金萱茶」などとして生産され、四川省では緑茶とジャスミン茶が特に観光客から人気だという。蒙頂山は「蒙山」と「百丈湖」という二つの区域から成り、四川省の省級風景名勝区にも指定されている。

 蒙頂山の歴史は古く、唐代の玄宗天宝元年(742年)から、皇帝へ献上するための祭事用の茶(貢茶)づくりが開始したとされている。以降、「皇茶園」として皇帝の茶を守るための寺院「天蓋寺」が山頂付近に建立され、製茶活動がスタートした。

 蒙頂山が世界に認知されるようになったきっかけは、2004年に蒙頂山で開催された国際的な茶文化の研究会「第8回国際茶文化検討会」だった。この会で「世界茶文化蒙頂山宣言」が行われ、蒙頂山が世界の茶文化の発祥の地であることが認められたとともに、周辺地域の観光開発が行われるようになった。

天蓋寺の皇茶園。奥の虎が茶を見張っている

 天蓋寺では、唐代に開設された「皇茶園」の見学のほかに、製茶の作業の様子や茶芸のショーを鑑賞することもできる。

 山の中腹にある駐車場から天蓋寺まではロープウェイが運行しており、約17分で山頂付近までアプローチできる。

茶を乾燥させる「炒茶」の作業。鍋の中心部は200度近くにもなるそうだ

境内では緑茶をいただける。芳醇な香りと濃い苦みが甘いお茶菓子に合う

【歴史】三国志や仏教の聖地と世界に誇る文化遺産

 四川省は歴史にまつわる名所・名跡の宝庫だ。成都市内には『三国志』に登場する将軍・劉備や宰相・諸葛亮などを祀る武侯祠があるほか、成都郊外の青城山・都江堰は世界文化遺産として名高い。四川省南部には、中国仏教の始まりの地とされる峨眉山・楽山大仏が鎮座するなど、奥深い歴史を持つスポットが数多く存在する。

●武侯祠
 成都市武侯祠大通り沿いに位置する国家4A級観光地。君主と臣下がともに祀られる中国唯一の祠堂となっており、宰相・諸葛亮の死後「忠武侯」の諡号を得たことから「武侯祠」と呼ばれるようになった。現存する建物の大半が1672年、清代の康熙年間によって建て直され、1961年には中国の重要文化財に指定。1984年には博物館が造られ、2008年に中国一の一級博物館と評価を受け今に至る。このため武候祠は「三国聖地」と称されることもある。施設内には劉備や諸葛亮だけでなく、武将の張飛や関羽、諸葛亮の息子・諸葛瞻、孫・諸葛尚も祀られている。

この奥に劉備や諸葛亮が祀られている

●青城山・都江堰
 青城山は、成都市から約68キロの場所にある中国道教発祥の地。青城山は起伏に富んだ峰に囲まれ、山全体が一年中緑に覆われていることから、奥深い静かな大自然を意味する「幽山」として知られている。

 都江堰は、青城山から10キロほど離れた位置にある世界最古の水利・灌漑施設。建設時期は2千年以上前にもさかのぼり、ダム施設無しで河川の水を引水できる。中国国内で最も保存状態の良い古代水利施設の都江堰は、「世界文明史の傑作」とも称されている。

 どちらもユネスコ世界文化遺産に登録されており、中国の国家5A級観光地に指定されている。

●峨眉山・楽山大仏
 峨眉山は四川盆地の西部に位置する標高3099メートルの山。古くから中国四大仏教名山(五台山、九華山、普陀山、峨眉山)の一つとして知られており、普賢菩薩の霊場とされる。

 楽山大仏は、四川省楽山市の峨眉山にある高さ71メートルの大仏で、岷江、青衣江、大渡河の3河川の合流地点を見下ろす形で座している。1世紀頃、この地に中国で初となる仏教寺院が建てられ、楽山大仏は8世紀頃に作られたといわれている。絶壁を彫って作られた磨崖仏としては世界最大級を誇る。

 峨眉山と楽山大仏はともに1996年にユネスコ世界複合遺産に登録されているほか、中国国内でも国家5A級観光地に指定されている。

【ショッピング】昔の街並みを楽しめる巨大な繁華街

 中国茶や四川料理といった食文化などを育んできた四川省では、さまざまな土産物が販売されている。中でも成都市内には、昔ながらの街並みを再現したショッピング施設が人気の観光地として注目されている。ここでは、武侯祠に隣接する「錦里(きんり)古街」と、「寛窄巷子(かんさくこうし)」を紹介する。観光で成都市内を訪れるなら絶対に足を運びたいスポットだ。

●錦里古街
 武侯祠に隣接する屋外型商店街。明や清の時代の建築様式を再現した建物が狭い通りを覆うように建てられており、本格的な四川料理を提供する飲食店や土産物屋、見世物屋やゲーム体験ができる施設などが多数出店している。中心部には大きな池を囲む広場もあり、テーマパークのような雰囲気を楽しめる。“映える”写真を撮るなら必ず訪れたいスポットだ。

多くの人々でにぎわう錦里古街の様子

●寛窄巷子
 成都市青羊区に位置するショッピング施設。成都で唯一清朝時代の街並みが残っているエリアで、こちらも古い町並みが人気だ。寛窄巷子は「寛巷子」「窄巷子」「井巷子」の三つの巷子(横丁)から成り、中国で1世紀頃に成立したといわれる都市型の住居形式「四合院」が特徴となっている。施設内には、バーやレストラン、宿泊施設などが入り、モダンな店も多く構えているためどの世代でも楽しめるスポットとして人気を集めている。

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