東北の官民組織、シンポジウムで事業アピール
桜を題材に東日本大震災の被災地復興を目指す東北の行政、旅行会社、金融機関など官民で組織する「東北・夢の桜街道推進協議会」(会長=細野助博・中央大学大学院教授)は2月23日、東京都内で「東北復興支援シンポジウム」を開いた。東北の観光振興や復興に関わる関係者が登壇し、復興に向けての取り組みや提言を述べた。協議会が推進する東北の桜巡りや酒蔵巡り事業を一層周知すべきとの声が多く挙がった。
東北の桜巡り事業「東北・夢の桜街道」は、東北各地に点在する桜の名所を復興への祈りを捧げながら観光客らに巡ってもらう事業。
協議会は「桜の札所・八十八カ所」として、一番の「三春滝桜」(福島県三春町)から八十八番の「弘前公園」(青森県弘前市)まで、合計88カ所の“札所”を設定。宿泊券などが当たるスタンプラリーも行っている。事業には旅行会社も参画し、札所巡りのツアーを造成、販売している。
協議会では通年観光を推進するため、春以外の季節も東北の名所を巡る企画を実施。夏は祭りを巡る「東北祭り街道」、秋は酒蔵と紅葉と温泉を巡る「東北酒蔵街道」、冬は雪景色を巡る「東北雪見街道」を行っている。
シンポジウムでは関係者7氏が登壇し、パネルディスカッションを行った。日本観光振興協会の久保田穣副理事長は、東北観光の復興状況を数字を挙げて解説。インバウンドに言及し、「2010年と17年の比較では、他の地域が300%(の伸び率)を超えているのに対し、東北は130~140%。ただ、逆にいえば、大きなポテンシャルを秘めていることになる。アジアの観光客の6割がリピーター。次の訪問地を探す時、大きな選択肢となるのが東北だ」と述べた。
久保田氏はさらに、「外国人が行いたいことの上位が四季の体験。桜街道は有効な事業だが、導線を作らなければほかの地域にお客さまが流れる。さまざまなプロモーションを行うとともに、サイトを工夫して、東北への導線を作るべきだ」と提言した。
山形県かみのやま温泉「日本の宿古窯」の佐藤洋詩恵社長は、風評により観光客がほとんどいなくなった当時を述懐。東北の女将がまとまり中央省庁や旅行会社を訪問し、被害の払拭に努めた当時の様子を述べ、今後もその払拭に努めるとした。
日中科学技術文化センターのグリザティ・バヤハメティ常務理事は、「温かい人情、祭りと、東北には素晴らしい素材が多い。しかし、中国で知る人は少ない。インターンシップで日本を訪れようという学生が、手続きが煩雑で断念するケースもある。海外への宣伝強化と国の手続きの簡素化をお願いしたい」と述べた。
7氏によるパネルディスカッション