ホテル一井(群馬県・草津温泉)は、「旅館をスタッフの自己実現の場へ」「スタッフを大切に育て、おもてなしのスペシャリストを養成したい」との思いのもと、人財(人材)育成、とりわけ若年世代の育成に力を注いでいる。自館の人財育成から草津町全体の発展までを見据える同館女将の市川薫氏(草津温泉観光協会会長)に話を聞いた。
SDGsでは「働きがいも経済成長も」のゴールが設定されている。市川氏はコロナ禍で観光業界、特に宿泊業界への就職を希望する若者の減少を憂慮し、「観光業界への就職を希望する若者の意思を無駄にしてはいけない」との思いから、毎年、13~20人ほどの新卒採用を継続している。高校卒、専門学校卒、大学卒とさまざまな新入社員を採用し、観光業界で通用する人財へと育成することに注力する。
「敬語などの言葉遣い、上座、下座も分からない新入社員も多い」とのことだが、市川氏も指導に当たる勉強会や接客研修を経ると、各社員が高い意識を持って業務に尽力するようになる。「観光業界で働くことに誇りを」という市川氏の思いが伝わり、若年世代のスタッフは自信を持って日々顧客に対応している。「各自が働きがいを感じながら自身の意識、スキルを高めることがお客さまへのサービスの向上、ひいては旅館全体の質の上昇につながる」と市川氏。
市川氏は「人が観光を作り、観光が町を作る」と話す。草津町にとって観光は基幹産業であり、住民の多くも観光の重要性を理解しているからこそ、「『町民にとって暮らしやすい』『お客さまに訪れてもらいやすい』の両観点から町づくりを進めていく」ことの必要性を説く。施設スタッフ、地元住民、来訪者が一体となって草津のまちづくりは行われている。ホテル一井の、SDGsと町全体の活性化に関する取り組みは、いつも「人」から始まる。
市川氏による研修