生ごみを堆肥化
戸田家(三重県・鳥羽温泉郷)は、SDGsが世界的な関心事となっていない30年ほど前から環境に配慮した取り組みを推進し、2019年にはエコマークの表彰制度「エコマークアワード」で「エコ・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。同館の環境保全に関する取り組みを取締役業務支配人の宍倉秀明氏に聞いた。
1992年、同館は排出される生ごみ処理に着目し、環境保全に関する取り組みを本格的に開始した。宍倉氏は「当時は世間のエコへの関心が低く、スタッフに館内ごみの分別を習得してもらうのにも3カ月ほどかかった」と苦労を振り返る。その後も、生ごみを堆肥化して育てた野菜を料理で提供するなど、環境とおもてなしの両立を図り続けた。
さらに取り組みを推進し、調理時に廃棄される残渣(ざんさ)を養殖用に飼料化する試みも行った。「なかなか担当の省庁から許可が降りなかった」と宍倉氏が振り返る残渣の飼料化は、自社のいけす内で自館に提供する魚に限って与えるという条件下で認められた。この飼料で育った真ダイが館内で顧客に消費され、残渣がまた飼料になる”海産物のリサイクル”は、宿泊業界としてはかなり画期的だ。
館内から廃棄された古紙の再利用にも着目。製紙会社と連携し、古紙をトイレットペーパーへとリサイクル利用する流れを構築した。
これらの取り組みはスタッフの環境保全への意識を高め、顧客からは歓迎する声も増えた。「かつては『そんなことをして何になるのか』と言われたが、現在では多くの方に評価してもらえている」と宍倉氏。旅館がエコマークを取得した事例は希少で、同館の先進的な取り組みには公私の別を問わず多くの組織や企業、人が注目し、今年4月には「三重県SDGs推進パートナー」に登録された。宍倉氏は「引き続きSDGsやエコに関する取り組みに尽力したい」との思いを語った。
導入されている生ごみ処理機