長野県・渋温泉で1927年に創業し、百年近い歴史を持つ、春蘭の宿さかえや。客室数26室のこぢんまりとした宿だ。特に接客と料理を売りとしており、宿泊サイトでの口コミ評価も高い。
その同館は、SDGsにつながる活動として、主に(1)教育(2)ジェンダー(3)エネルギー(4)経済成長と雇用―の四つの取り組みを進めている。
「教育」は、人によるサービスが要と考え、最も力を入れている。一つには、生き方教育として、「CL(コンストラクティブ・リビング=建設的な生き方)研修」を実施。これは、やる気がなくても行動をコントロールできる「自力」と人から応援される「他力」を身に付ける研修だ。
「マネージメントゲーム研修」は、意思決定の際の自分のくせを把握する訓練。経営者や幹部だけでなく、全社員を対象に年に3回行っている。
さらに研修のレベルアップを目指し、「『CL』と『おもてなし』を融合させた、さかえや独自の教育システムを構築したい」と湯本晴彦社長。
同館の「ジェンダー」は、どんな人でも輝けるようにする取り組み。その一環として、女性の活躍を推進。現在、女性幹部登用率は50%を超える。さらに今後は、LGBTQへの対応にまで取り組みを広げる方針だ。
「エネルギー」では、十数年前から脱炭素化を目指し、太陽熱のソーラーシステムにより灯油使用量の半減に成功。今、地熱エネルギーの活用にも挑戦している。
同時に、省エネ意識の改革も進める。湯本社長は「物を大事に最後まで使い切る、『物の性を尽くす』という理念を社員に浸透させたい。それがエネルギー問題の解決に通じる」と意図を語る。
「経済成長と雇用」としては、不登校や引きこもりの若者を受け入れる「フリースクール」を館内で運営し、彼らが就労できるように支援する。自社でも雇用をして活躍させている。
フリースクールの様子