◆「メタバース」と旅行・観光産業の未来
「メタバース」。いわゆる、次世代の仮想空間のことだが、最近耳にすることが多くなった。
メタバース(Metaverse)とは、メタ(Meta、「超越した」「何にでもなれる」といった意味を持つギリシャ語の接頭辞)と、ユニバース(Universe、宇宙、森羅万象、全世界などの意味)を組み合わせた造語。日本では、「仮想空間」と理解されているかと思うが、ネットワーク上のデジタル空間で実現される多種多様な理論、発想、技術のことをいう。
そのメタバースの中で、新しい体験・経験を提供し、顧客に満足感を得られるような新しいビジネスが生み出されている。コロナ禍で、対面での面会、外出ができず、Zoomなどのオンラインミーティングをツールを使って会議をしたり、友人と会話をして同じ時間を共有すること、これも一種のメタバースと言えるだろう。このように、デジタル空間において、私たち人間の新しい行動、体験が広がっている。
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使って楽しむゲームやアトラクションが身近になりつつあるが、このメタバースが今後、観光・旅行業界でも導入されていくと考える。
ディズニーランドでは、テーマパーク施設内でメタバースを導入すると、方針を発表した。リアルの世界でも、デジタルの世界でも、ディズニーの世界観を堪能できるようにすると同社CEOは話している。
また、マリオット・インターナショナルは2021年12月にデジタル・グッズ制作を発表。詳細は明らかにはされていないが、旅行をモチーフにしたデジタル・アート作品を制作するようだ。
テーマパークや、ホテル、観光地、その場で体験することだけが「旅行体験」ではなく、自宅でネットワークにアクセスし、自分のアバターがテーマパーク内を散策したり、観光したり、ホテルを利用する世界がまさに始まろうとしている。
ザ・キャピトルホテル東急では、「ぬい撮り」プランを展開している。自分(人間)が旅行・外出できない代わりに、大切にしているぬいぐるみや人形がホテルに宿泊するというプラン。ホテル隣接の日枝神社にお参りする観光ツアーもセットになっている。
例えば、この「ぬい撮り」プランをデジタル空間の中で実現させる。ぬいぐるみではなく、自分のアバターがホテルに宿泊し、神社へお参りする体験を可能にするのがメタバースの旅行体験となるかもしれない。
(コレリーアンドアトラクト代表取締役)