毎年恒例のお盆休みが終わった。本来は祖先の霊を祀るための行事であるが、1960年代以降の高度経済成長期に大量の都市移住者が生じてから年末年始とお盆の時期に帰省することが恒例化した。省という字は「親の安否を確かめる」を意味しており、一時的に故郷に帰って両親に会い、お墓参りを行うことが恒例の行事になった。
故郷を大切にしたいという思いは税制面でも具現化している。それは2008年から実施されている「ふるさと納税」制度だ。個人住民税制度の一つとして、任意の地方自治体に寄付することによって寄付額のほぼ全額が税制控除されるシステムである。
そのために別称では「ふるさと寄付金」とも呼ばれている。この制度が導入された08年のふるさと納税額は81億円であったが、17年には3653億円に激増している。導入時の45倍の増加だ。
17年の都道府県別ランキングでは、(1)北海道365億円(2)佐賀315億円(3)宮崎249億円(4)山形226億円(5)大阪府200億円の順。
市町村別では、(1)泉佐野市(大阪)135億円(2)都農町(宮崎)79億円(3)都城市(宮崎)74億円(4)みやき町(佐賀)72億円(5)上峰町(佐賀)66億円(6)湯浅町(和歌山)49億円(7)唐津市(佐賀)43億円(8)根室市(北海道)40億円(9)奈半利町(高知)39億円(10)藤枝市(静岡)37億円の順となっている。
ふるさと納税の返礼品として地場の特産品が採用され、地場産業・伝統工芸の活性化に貢献しているが、一方で豪華な返礼品競争が大きな問題になっている。週刊誌でも「ふるさと納税『返戻率の高い』自治体はここだ」などとあおっている。
総務省は昨年4月に返礼品の価格を寄付額の3割以下に抑えるように各自治体に求めたが、従わない自治体も多いのが実情といわれている。返礼品のルールを法制化すべきという意見もあるが、一方で地域の判断を縛るのは地方自治の原則にそぐわない面もある。
近年、釣りやカヌーなどの体験型の返礼を用意して寄付者に地域に来てもらう事例が増えている。寄付先への訪問をきっかけにして、地域との交流を深めてもらい、継続的な応援団になってもらうことも大切だ。このような面で観光・旅行業界は自治体に対してさまざまなアイデアを提供し、ふるさと納税を通しての地域活性化に貢献すべきだ。
ふるさと納税は地方の税収格差を是正する方策として一定の効果を挙げたことは事実であるが、豪華返礼品競争に象徴されるように是正すべき面も多々ある。ふるさと納税も大切ではあるが、一番の根本的問題は国から地方への税財源と権限の移譲であり、国民の側がもっと真剣に地方分権の本来のあり方を考え、行動することが大切である。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)