【私の視点 観光羅針盤 209】NZのタビナカ体験市場 地域ブランディング研究所代表取締役 吉田博詞


 ラグビーワールドカップ(W杯)2019がついに開幕。優勝候補チームは試合開始から、11月2日の決勝まで日本にずっと滞在してくれる。強豪国のファンは、どこも自国の優勝を信じて、帰国便は11月2日以降のチケットを押さえているとの話もある中で、長期滞在におけるタビナカ消費の可能性は前回紹介の通りだ。

 欧米豪強豪国におけるタビナカ商品がどのような水準で提供されているかを知ることで、日本におけるタビナカ商品の在り方に関して考えてみたい。

 優勝候補の筆頭格であるオールブラックスのニュージーランド(NZ)は、観光先進国として捉えることができる。このNZのモデルは、日本の今後のタビナカ成長において参考になるポイントが多分にある。予約手配から、移動・ガイド等の一連のポイントを整理してみたい。

 まずは予約手配に関してだが、これら主要観光地訪問に際し、予約は前日ギリギリまでOTA然り、i―SITEといわれる観光案内所&旅行予約カウンター併設の場所で予約可能だ。i―SITEは都心部や空港の主要な場所に立地している。政府公認で旅の相談から予約手配・決済・注意事項や細かいアドバイスまで丁寧に行ってくれる。デザインが国全体で統一されており、いつどこの都市に行ってもまずはi―SITEを見つければ旅のことがいろいろ相談・手配できるというのは心強い。

 続いて集合解散に関しては、各自のホテルへというのがスタンダードだ。主要都市の規模が大きすぎないことも理由だろうが、約束時間にホテルのロビー前で待っていれば迎えに来てくれる。1dayツアーにおいても、タクシーツアーが主流であり、車体も10人程度乗車可能な大型のベンツ製のものであり、一人一人の席もゆったりしている。欧米人の体格を考えると、このくらいのスペースが基準であることに気づく。

 また、運転手が移動中のガイドをすることも特徴である。運転しながら、NZの特徴やマオリ語、文化等を案内してくれる。途中、主要スポットで写真を撮影したり、休憩所でのおすすめメニューを教えてくれたりとサポートのレベルも高い。主要な観光地に着くと、ガイドをバトンタッチして、あらかじめ施設側の専門ガイドに慣れた手つきで、役割分担していくという分業もしっかりと確立されている。

 NZの水準は、NZ人はもちろんのこと、そこを訪れる欧米豪の人が当たり前に体験しているレベルであり、旅慣れた訪日客はそれを一定のクオリティで日本滞在中に求めてくる。一定の所得を持った訪日客において、タビナカのストレス軽減は大事なテーマの一つだ。予約・手配・移動・ガイドといったちょっとした観点もそれぞれに関して、近い将来しっかりと確立していくことができればより満足度を上げられるだろう。

 ラグビーW杯開幕後、多くの欧米豪の人が来た際に、何に感動して何に不満を感じているか、ぜひ話しかけて聞いてみてほしい。そこから得られるヒントは今後、日本の成長へのカギになるに違いない。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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