体験消費でもっと稼ぎたいという地域は多いだろう。その際、ターゲットと提供価値を明確にしていく必要性を感じている。そもそも、国内向けの体験プログラムを少しの言語対応を加える程度で販売しているケースが多いことに非常にもったいなさを感じる。それも国内の修学旅行向けの、無料から千円くらいの価格帯だったりするとなおさらだ。
これから体験プログラムを造成していく際に、特に(1)アジア圏(2)欧米豪(3)富裕層―の三つのターゲットでは商品の価格や在り方が変わってくるので、それぞれの特徴および留意点をこちらにあげていきたい。
アジア圏 滞在期間は4~7日程度。それもリピーターが多い。やりたいことはあらかじめ明確にしており、予算も買い物やグルメ等にかける費用の方が多い傾向がある。写真映えが大事な要素で、短時間で簡易に体験できることが好まれている。価格は2千~5千円程度が一つの相場となってくる。
欧米豪 滞在が2~3週間と長期にわたり消費金額は比較的多い傾向にある。じっくりと堪能したい需要が大きく、歴史背景やこだわり等のうんちくをしっかりとしたガイドが教えてくれることを期待している。
子どもだまし的なものは敬遠され、料金が安すぎるものは、これで大丈夫かと安心安全が疑われることもある。アクセスに関しては送迎があるとなおよい。環境への配慮等も求められる。価格は8千円程度から2万~3万円のものでも十分体験してくれる。
富裕層 滞在は人によって違うが、比較的長いバカンスが多い。より地域ならではのホンモノ体験を求める傾向が強い。専門家や特別なガイドが、普段他の人が立ち入れないようなところを、その人のために案内してくれる特別感を求めている。
豪華なものはある程度の経験の中で慣れており、より地域との交流が求められている。口コミの力は非常に強く、特定のファンに評価されたら、その周りの富裕層もじっくり堪能してくれる可能性がある。価格は5万円から無限大といったところだ。
これらは簡単なくくりであるが、そもそも旅に求める目的や滞在の在り方が違う中で、ひとえに体験といっても在り方が違うことを理解いただけるだろう。
併せて、ターゲットの中でも国や旅のスタイルに合わせたバリエーションをつけることが求められている。新婚旅行・家族旅行・シニア・友人との旅行で、それぞれ求める演出は大きく異なってくる。
ジャストアイデアや、プロダクトアウト的なところで展開するのではなく、エリア内にどんな人が来ていて、どんな体験を求めているかをしっかりと描いて、PDCAを高速で回して検証・改善していくことができれば、より消費単価アップにつなげていけることは間違いないだろう。
(地域ブランディング研究所代表取締役)