【私の視点 観光羅針盤 257】感染症リスクの正しい理解と対策 地域ブランディング研究所代表取締役 吉田博詞


 9月の4連休で観光地が活気を取り戻してきた。10月から「Go Toトラベル」キャンペーンも東京の拡大が決まり、イベント開催基準は5千人以上のものも規制が緩やかになってきた。一定の制約条件下でも、経済を回していく流れがより加速されると期待されている。

 その際、受け入れの地域側においても、正しい感染症リスクの理解と対策が求められていくことになる。感染症対策はどこか一つでも徹底できていないと、そこから感染が拡大して地域全体の信頼を失いかねないリスクもあるので、地域全体での取り組みを期待したいところだ。

 私も昨今、感染症対策専門家の方々と各地における感染症対策のお手伝いをしている。感染リスクの洗い出し、業界別ガイドラインに沿ったリスク対策のマニュアル化、スタッフへの教育、いつでも対策が徹底されている状況づくりといったプロセスを経て展開されるものである。

 その際痛感するのが、新型コロナウイルスの特性を正しく理解して、正しく対策をしていくことの必要性である。なんとなく消毒、マスク、検温といった感じで、とりあえず感染症対策をしている張り紙をしておけば、といった施設がまだまだ多いことが気になっている。どこにリスクがあるのか洗い出しをして、手を打っていくようにしていきたいところである。

 前提論で一つ認識をする必要があるのが、新型コロナウイルスにおいては、無症状の感染者がおり、悪意なく接点を持ってしまう可能性があることである。どこかに感染者がいるかもしれない前提で、次の四つの接点からのリスク想定をしていきたい。

 【1】スタッフからスタッフへ

 こちらは、おのおのが事業再開において、ある程度徹底されているだろう。ただし家庭内のリスクは常について回るので、自身だけでなく、家族の日常生活をしっかりと意識する必要がある。

 【2】スタッフから参加者へ

 こちらもすでに、多くで対応はできているだろう。この徹底ぶりが参加者の安心材料になり、できていないと、この悪評はすぐに広まるものだと認識したい。

 【3】参加者からスタッフへ

 1、2に比べて、若干おろそかになりがちである。新しい旅のエチケットも徐々に浸透してきた中で、スタッフを守る上で、参加者に徹底をお願いしていくしかない。お客さまだからと、緩い基準で対応してしまうとそこからのリスクが大きい。

 【4】参加者から参加者へ

 スタッフの目の届かないところでも、参加者が集まっている場所でのエチケットの徹底をどう図っていくかも鍵になる。

 こうしてみると、3、4の事項はより参加者に協力を求めていきたいことであり、トラブルを起こさないためにと注意を怠りがちであるが、地域を守っていくためにもこれらの正しい理解とスタッフ、そして参加者への徹底から地域の信頼を獲得して、地域の観光再生につなげていってもらいたい。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 

 
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