リモートワークの加速で、ワーケーション誘致が加速している。オフィスワーカーやクリエイティブな業務が多い人を中心に業務活動の場所を多角化しており、需要も拡大している。受け入れ側におけるハード・条件整備に関しては、前回この欄でお伝えした。今回は、実際の満足度アップ・リピート化させていくために必要な要素を少し掘り下げてみたい。
東京等の大都市からの距離や、空港や新幹線の駅からアクセスしやすいといった要素は一つの優位性として認識されている。例えば、那須は今年人気が一気に拡大したエリアである。ただ、ワーケーション誘致に躍起になっているエリアもかなり増えてきている中において、アクセスだけでは競争優位性は出せない。また、単純に自然が豊かで食がおいしいというメッセージでは、他も同様のことを訴求しているので響かないだろう。
これからの差別化新機軸として、ワーケーションにおいても、わざわざそこに行きたくなる仕掛けの設計と発信が必要になってきている。そもそもワーケーション利用者の需要の背景を理解し、なぜ選んでくれるのか、どんな時間を過ごして、どんな特別な価値を提供できるのかという要素を明確にしていく必要がある。
まず「癒やしやリフレッシュ」があげられる。ワーケーション滞在の前提において、自然環境の豊かな場所で、のびのびとしながら仕事をしたいといったことは大きな目的の一つである。ただし、どこも自然の中で癒やしやリフレッシュができることは当たり前になっている。だからこそ、プランの企画やちょっとしたサービスを加味していくだけで満足度は上げられる。
例えば、窓から見える景色が雄大であることや、窓べりに作業スペースをおけて、それを見ながら打ち込める環境を保証してくれること。温泉が魅力であればいつでも入ることができるとか、こだわりの効能があるハーブティーが飲めるとか、ちょっとした早朝ヨガ教室があるとか、これらの企画プロデュースがある仕掛けもいいだろう。
また「学び・つながり」といった要素も目的として大きい。滞在中にローカルな人とつながりを持てて、自分らしさを取り戻す。宿のホストやなじみのお店ができて、そこでちょっと話を聞いてくれる、都会では感じえない居場所がそこに出来上がり、リピート化しやすくなる。そこでしか知りえないこと、つながれないものを仕掛けとして入れておき、あなただけのとっておき時間のお手伝いができるのも好印象だ。
これまで、旅行客をリピート化させるのは少々ハードルが高かったが、ワーケーション利用者は十分にリピート化できる余地もあり、ゆくゆくの移住者になってくれる可能性もある。こんなに可能性がある顧客との接点を戦略的に設計することで、もっと地域の稼働アップ、そしてファン拡大につながっていってもらいたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)