アドベンチャーツーリズムが隆盛する中で、アフターコロナを見据えた受け入れ環境整備がより求められている。稼げるプロのガイドはどの程度のモデルであるのか。
北海道ニセコエリアで自らもガイドとして動かれ、各地でアドバイザーを務められているヒーロー北海道代表の高橋幸博さんによると、スキーツアーの参加者は5人までで、ガイド単価は9~15時の6時間(ランチ休憩含む)で7万円、コロナ前には600人のガイドが活躍していたという。今は休止してしまっているが、アフターコロナに目指していきたいネイチャーガイドの一つの水準がここにある。
ニセコにおいては、2004年ごろから25人程度の外国人ガイドが入って教え始めたところから、エリアとしてのブランディングも成功して、この状況まで至ったという。これらのガイドは、ニセコで4カ月間ガイド・インストラクターをして、数カ月休み、南半球で数カ月仕事をするガイドも多いようだ。1年のうち4カ月の長期休暇取得が可能なライフスタイルが確立されているという。
欧米豪の自然体験の世界では、スキーやラフティング・カヌー等のガイドに対価を支払うのが当たり前である。1週間から1カ月滞在する中で、アクティビティ自体を魅力的なものにしてくれ、地域交流の橋渡し役になるようなガイドが求められていることになる。
海外の方からすると日本人であること、ローカルであることはより評価ポイントであり、サービスレベルの底上げと言語対応ができ、地域のコンシェルジュとして食や生活の橋渡し役を務めていくことができれば、より満足度アップにつなげていけることは間違いない。
その満足度が高ければリピーターとなり、また友人や家族、職場のスタッフ等、別の顧客を連れてきてくれるという。そして、投資家として自らがそのエリアに投資するというサイクルも出来上がっているようだ。それが、パークハイアットやザ・リッツ・カールトンの進出につながり、その顧客にも満足してもらえるサービスになっている。
1日7万円のガイド料という金額自体を聞くと、そんな高額と思う方も多いかもしれない。これは一つからくりがあり、前述の最大5人という人数で割ると参加者1人当たり1日1・4万円となる。
この単価感で考えると、1デーツアーや、少し質のよい体験アクティビティの1日相場と大して変わらないことに気づくだろう。こうしたパッケージの在り方を含めて設計していけると、地域に根付いたガイドを稼げる職業に変えていける可能性がある。
ニセコに投資をした投資家たちは、まだまだ日本の他のエリアの魅力の潜在性を感じて次なる世界水準の場所を探し準備をしているという。可能性がある地域において一つの座標軸として、次のニセコのポジショニングを狙うのも手かもしれない。
ニセコにも課題はあり、それをしっかりと分析して、各地の戦略に生かしていくことができれば別角度の再生プランを描けるに違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)