地域の持続性を担保したサスティナブルツーリズムの必要性がこの1年でより求められるようになってきた。コロナの影響も強い中で、マスツーリズム、オーバーツーリズムからの転換の意味合いやSDGsの必要性もより声高に叫ばれるようになってきた中で、地域・地球の持続性にきちんと配慮した受け入れ環境整備、プログラム開発がより求められてきている。
UNWTO(国連世界観光機関)の定義では、「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」とうたわれており、世界的に大きなトレンドとなった中で、コロナでさらに加速したといっても過言ではない。
2020年6月には観光庁とUNWTO駐日事務所が「日本版持続可能な観光ガイドラインJSTS―D」を発行しており、観光地向けの持続可能な観光の国際基準であるGSTC―Dに日本的な要素を組み入れた形での日本版のガイドラインが示されている。
このサスティナブルツーリズムの概念から地域の受け入れ態勢を構築していく必要性は多くの方々の共感を得られやすいものであり、各種取り組みも増えてきている。しかし、教科書的にきれいにまとめた取り組みをしていくだけでは、実際の誘客実績につながりづらく、形式先行になってしまう点も実際の事業者サイドからすると感じる課題だろう。
インバウンド回復期には、これがあることが大きな差別化につながるので、今のうちにしっかりと準備しておくことは意義がある。
ただ、直近の国内客に対しては、どう定義づけて取り組んでいけばよいのだろうか。
日本においては、まだこの価値観への共感から消費が大きくなるという流れは主流になりきっていないのが正直なところだろう。ただし、近いところでいうとクラウドファンディング等でかなりの応援が集まっているように、ストーリーが明確で誰かが何かに向けて努力しているという人情物語には多くの方々の共感を得られやすいというのが一つの国民性といえるかもしれない。
プログラムを提供している主催者が、地域のどんなものをどんな思いで知ってもらいたく実施しているのか、プログラムを通して何を実感してもらい、どんな感情を持ち帰ってもらいたいのか、そのプログラムに参加することが地域にどんなメリットがあるかを丁寧に掘り下げてストーリーで訴求していけば、共感も得られやすいだろう。
顔が見える、オモイが明確なものはより共感が共感を呼び、ファン、応援団が定着しコミュニティーとして強いつながりを維持していける流れが出来上がるだろう。
大きな理念に共感して先の準備を丁寧にしていくとともに、事業を軌道に乗せていくという観点において、このバランスをうまく設計して展開していくことができれば、より事業としても担保され、結果、地域自体の持続性も高まっていくに違いない。そんな流れの加速を期待している。
(地域ブランディング研究所代表取締役)