【私の視点 観光羅針盤 283】広域DMO戦略の各種組織連携 地域ブランディング研究所代表取締役 吉田博詞


 全国のコンテンツ造成のサポートに入っている中で感じる大きな課題がある。広域DMOが描く戦略と、各地に存在する観光推進組織の連携が弱いことだ。地方運輸局や都道府県・市町村観光セクション、地域連携DMOや地域DMO・観光協会、事業者等が見ているゴールや戦略にまだまだ大きなばらつきがあり、もっと連携が加速されていけば、無駄が省かれて相乗効果が増していくと痛感している。

 広域DMOは観光庁とも連携しながら、しっかりとした中長期ビジョン・戦略を描き、広域エリア全体の狙うべきポジションやロードマップを具体的に落とし込んでいる。どの広域DMOの戦略を読んでも、納得感のあるものが多い。

 しっかりとマーケット動向やエリアの潜在性を見極めた上で、業界のプロが議論を重ねて作り上げたものであるので、説得力がある。コロナ禍においても、積極的に戦略の修正に努めている広域DMOが多く、今できる国内対策、市場の回復を見据えた展望、両側面のバランスも考慮されており、非常に参考になるものが多い。

 ただ残念なのは、これが各観光推進母体と共通のゴール、戦略になっていないことである。広域DMOにおいて連絡調整会議が開催され、議論はされつつあるが、あくまで共有にとどまるケースも多く、どうすればその目標にうまく役割分担をしながら達成できるかというところまで踏み込んだ議論・調整がなされていないことが非常にもったいないと感じている。

 広域DMOが考える中長期戦略は、広域エリア全体の共通戦略になって然るべきだが、その認識を持てている各観光推進母体が少ないことが非常に惜しい。この解決には二つのポイントで動いてもらいたい。

 1、司令塔が積極発信を

 広域DMOの代表的ポジションないし、マーケティング責任者は地域全体の観光戦略の立案・推進役であることを内外にもっと知らしめていく必要性を感じている。自らもっと各地に赴き、その理解・連携モデルを共通認識にしていくべく、汗をかくところからスタートになる。そして、地域で頑張る事業者の実態を理解して、もっとそのためにDMO組織としてできることを考えていく必要がある。また、ホームページ等でも積極的にこの戦略を発信していってほしい。

 2、事業者支援の機能分担

 事業者が事業継続・成長していかなくては意味がない。事業者との連携ポイントに関して、各地域DMO等、観光推進組織との機能分担を明確にし、エリア全体の推進力向上・底上げの両側面でバランスがとれている状況を作ってもらうことを期待する。この支援もダブりがあるので、普段から機能分担がなされると、さらなる効果が期待できる。

 この二つはすぐにでもアクションできることである。コロナ禍という危機を脱していくために、観光行政は短期で成果を上げ続け、地域の持続性担保が必要な状況を考えると、今年度はこの観点でよりスピード感をもって対応していければ、強い地域として大きな財産を遺していけるに違いない。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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