【私の視点 観光羅針盤 285】沸騰するハレ消費への準備 地域ブランディング研究所代表取締役 吉田博詞


 コロナの影響で海外に行けなくなって1年以上が経過した。今年のゴールデンウイーク(GW)においても緊急事態宣言、まん延防止等重点措置で移動自粛要請が出てしまった影響もあり、期待していたGW需要の落ち込みにガッカリしている地域も多いことだろう。

 2019年時点でみると、国内観光需要は22兆円の消費実績があり、日本人の海外旅行への渡航消費1・2兆円プラス現地消費といった需要は、経済の落ち込みからの減速こそあれ消えたわけではない。各種自粛フェーズが長く続いたことの反動から、きちんと対策が取られて一定のルールに則った上でのリベンジ消費が、沸騰寸前であるとも考えられる。

 このリベンジ消費の在り方は、Go Toトラベルが実施されていた際に、有名リゾートや観光地での高級ホテルへの需要と若干意味合いが異なってくることが予想される。当面の間、より需要喚起策としての割引型需要ではなく、タイミングを見計らっていたハレ消費がより動き出すことに注目していきたい。

 せっかくなら非日常を味わいに、少しでも遠くに行ってみようというマインドはさらに高まっている。特に、これまで何か非日常、異日常を味わうべく海外旅行に出掛けていた層が、まだまだ海外に当分行けそうにないがゆえに、まだ知らない日本における非日常、異日常を味わいたいという需要が高まっている。

 私の身近でも、2組が直近で沖縄の八重山エリアに結婚式やハネムーンで訪れていた。本来なら海外に行きたいという層になるだろうが、当面の海外渡航の難しさを受け入れた上で、国内で一番遠くて文化、自然の異日常を味わえる場所として選んだようだ。

 特にこの層は、一生に一度の思い出の体験にプチぜいたくとしてプラスαの費用を積極消費していることが興味深い。今しかできない、とっておきの家族の思い出への投資を、海外旅行時に持ち合わせていた消費マインドで訪れてくれている。

 当面、海外渡航が厳しい中でも、人生におけるハレ消費のお財布はまだ健在であることを考えると、受け入れ側がそこをターゲットとしたプラン、滞在をもっともっと積極的かつスピーディーに準備していければ大きなチャンスがあるだろう。エリアによっては取り込みが難しいワーケーションより大きな効果を出せる潜在性がある。

 特に今年度において、沸騰寸前のこの需要は今年の夏から秋にかけて一気に拡大していくと考えると、早く展開したところが勝ち組になれる。併せて、培われた高付加価値型プログラム運営ノウハウは、ゆくゆくのインバウンド回復時においても客層を大きく変えて、消費単価が高い層へシフトしていけるだろう。

 ウィズコロナ期は当面まだまだ数を呼べない分、とっておきの貸し切り・記念日プランを造成し、1組でも利益を稼げるような特別ハレ消費モデル創出への注力に期待したい。

 勝負は向こう数カ月となるが、今知恵を絞ってアクションしていければ将来への大きな財産となるに違いない。

(地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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