夏休みに入り、アウトドアツアー・アクティビティの需要が一気に増していくシーズンに突入した。4度目の発令となった東京都と、継続となる沖縄県が緊急事態宣言下となることで、制限がある中で動いていくことになる。
コロナの影響もあり、より自然と触れ合いたい、リフレッシュしていきたいという需要が増していることで、自然体験の提供も増えてきていることは時代の大きな変化だと感じる。ここで気になるのが、危機理解、危機管理の考え方である。
アウトドアアクティビティの危機管理の課題に関しては、日本におけるアドベンチャーツーリズムの第一人者であるマイク・ハリス氏はじめ各所で問題提起がされてきていたが、整っているとはいえない状況にある。旅行業には資格制度があり、業界団体もある中で、危機に対して業界全体で危機対応できる制度が整っている。しかし、移動や宿泊を伴う旅行業の範囲でない自然体験においては、無法地帯といっても過言ではない。
また、自然体験においては、誰でも気軽に、個人でも免許等なく参加できるので、その気軽さを含めてハードルが低く、一気に参加人口が増えてきていることは、地域資源の活用という観点においても、これから非常に楽しみなテーマである。
ただし、登山等でも素人が無茶をすることで事故が発生するニュースを毎年聞くように、今後危機を知らない参加者が増えてくることで、事故の増大がないようにしていきたい。
特に、事業提供側の意識改革が急務である。多くの地域においてカヌーやSUP、自転車等のアクティビティにおいて、提供側の意識があくまで機材を貸しているくらいの感覚で捉えてしまっているところも多いのが課題である。せっかくの思い出作りの目的でやってきた地域で、残念な思い出を残してしまってはもったいない。そのためにも、そもそものリスク理解とその対応策をきちんと準備していく必要がある。
あまり危機をあおるのはよくないが、例えば過去の事故と判例を知ることも大事である。昨今増えているゲリラ豪雨に関する事故で見ていくと、平成16年5月に起きた「屋久島沢登り事故」がある。
3人が死亡し1人が重傷を負った事故において、ガイドに鹿児島地裁の刑事裁判で、禁錮3年・執行猶予5年の判決が出ている。こちらは、賠償責任保険への加入がなされていなかったことも課題となっていた。責任には行政的責任、民事的責任、刑事的責任、社会的責任と多方面に発生することも理解をしておく必要がある。
プロとして業を営むには、そのリスクの理解とリスクを防ぐための事前準備、事故時の対応シミュレーション、事故後の処理シミュレーションまで徹底的に行い、そして常に見直してもらいたい。せっかく盛り上がりつつある流れをブームではなく定着させるためにも、各所の底上げを期待したい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)