【私の視点 観光羅針盤 297】イーバイクツアーへの期待 吉田博詞


 全国各地で、環境に配慮したイーバイク(電動アシスト付き自転車)ツアーが隆盛している。欧米では、サイクリングツアーという形式自体が観光における人気企画の一つであり、日本においてもインバウンド需要の高まりから訪日観光客を中心に人気になってきていた。そこにコロナ禍における、国内のアウトドア需要やエコ意識の高まり、環境省等の積極的な補助の影響を受けて、これらを着地型ツアー化した企画が続々と生まれていることが背景である。

 地域らしさを入れ込み、地域の持続性に貢献する先進的な着地型体験プログラム・ツアーに贈呈される第2回Attractive JAPAN大賞の大賞には、長野県茅野市の八ケ岳アドベンチャーツアーズ(代表・福井五大氏)が提供する「最新e―バイクで走る 八ケ岳絶景サイクリングツアー」が選出された。八ケ岳中信高原国定公園内をMATEという最新のイーバイクで走るという企画である。

 アップダウンの激しい高原を肌で感じるには相当な体力が必要であったが、イーバイクという手段で参加ハードルを下げることができた。

 また、専門ガイドが四季折々の植生の違いや、コースから眺められる百名山の山並みの特徴を丁寧に解説してくれ、天然湧水をマイボトルでくんだうえで参加するということでのエコ意識を醸成させる仕掛けがあること等が高く評価されたポイントであった。

 ここでは、イーバイクMATEというブランドを日本で初導入している。世界一の自転車都市とされるデンマークのコペンハーゲンで「ただ自転車が好き」という気持ちから構想・設計された自転車である。カッコよく・便利に・エコに、というコンセプトで自転車での移動自体を一つの楽しみに変えている要素は時代背景に適した展開でもある。

 これまでは自転車はあくまで目的地にいくための手段であり、イーバイク自体は電動アシスト付き自転車という名称の方が一般的で、シニアの体力補助的な意味合いや子ども乗せ自転車という印象が強い状況であった。そこに、かっこいい・乗り心地のよさを入れ込んで、自転車に乗ること自体に新たなワクワクを入れ込んでアクティビティ化していることも注目できる。

 代表の福井氏が自ら育った白樺湖界隈をもっと良いものにしたいという思いで提供し、エリアのコーディネーターとして自然満喫・滞在の楽しみ方を、熱を込めて語ってくれるがゆえに福井氏との交流を含めて感動体験になっている。四季折々のよさを語られると、また別の時季にこのエリアに滞在してみたいという感情醸成につながっているのも大きな特徴である。

 コロナの影響で滞在ツアー・プログラムの在り方も大きく変わっている中で、時代の需要に適応した企画が各地に生まれ、新たな地域における滞在促進になっていってくれる流れの拡大を期待したい。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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