感染拡大が落ち着かない。なかなか広域移動を見据えた展開がしづらい中、マイクロツーリズム促進を足掛かりにしていく方策も拡大している。感染拡大リスクの少ない近隣・県内・隣接県の方々にご当地の魅力を再認識してもらい、灯台下暗しだった状況を打破していこうという考えに大いに賛同する。
ただ、これまでと同じ商品、企画のままで、需要喚起策の県民割クーポン等の活用といった手法に陥りがちなところは非常にもったいない。各自治体と連携した需要喚起は目先のカンフル剤にしかならず、今後につながりづらい。
マイクロツーリズム促進時には、これまでとは違う角度から魅力を訴求し、驚きや発見、学び、居場所づくり、リフレッシュ等の観点から魅力の再編集を行い、プログラムを考えてみてほしい。ここでは三つの着眼点を考えてみる。
1、旬を伝える
地域における時季ごとの魅力、特徴を改めて整理して、旬のプログラムを作り上げる。ぜひ、景色、食材、風習、イベント、学び、人との交流において、来訪者にいつ来ればこんなことができるという魅力を、もっと自信をもって写真やスタッフの言葉で伝えてほしい。
2、学びのグレードアップ
何らかのレッスンや教室として、徐々にステップアップしていくのも一つの方策である。認定資格を渡す、各種講師が教えてくれる等の企画を準備して、知的好奇心をくすぐり、次はもっとこれを高めたい、知りたい、深掘りしたいという感覚を醸成していけると面白い。カルチャースクールに近いモデルを考えるのも方策だ。
3、プロセス形成
何かを一緒に創り上げていくプロセスを形にするのも方策だ。田植えをしたら草刈りや稲刈り、餅つきといったものまで参加したくなるだろう。都度進捗(しんちょく)をSNS等で発信して、過去に来てくれた方と次のステップを一緒に創り上げていく関係値を醸成していければ、居場所が出来上がっていく。
これらの仕掛けは、あくまで一つの切り口だが、これまでの紋切り型の滞在プログラムでは、近隣客を満足させることはできない。ただ、丁寧に仕掛けを作り出せれば、近隣客こそリピーター、ファンになってくれる。
大切な人と一緒にこの時間を大事にしたい、遠方から人が来た時に、地元だからこそ知っている旬な魅力をもっと自慢、紹介したいという流れを創出していけるに違いない。
コロナの影響で消費者動向も数ではなく、質でいいものを選びたいという需要に転換しつつある。近隣客でもまた来たくなる仕掛けを造成しておくことが、とっておきの近道となる。今、プログラムへの進化、地域と来訪者の関係値維持のための方策を丁寧に準備できた観光地が光を取り戻せるに違いない。住んでよし、訪れてよし、と感じられる地域拡大を楽しみにしている。
(地域ブランディング研究所代表取締役)