魅力的な地域紹介をしていくべく、ガイド養成に力を入れる地域が増えている。これまでの無償のボランティアガイドから、有償のお金を払ってでも満足してもらえるガイド付きプログラムへの転換を目指すケースも増えている。地域の奥深さを知ってもらうことや、地域内での消費金額をさらに増やしてもらうことなどを目的とした動きはこれからますます活発になるだろう。
全てがそうとはいえないが、無償のボランティアガイドに陥りがちな課題はガイドの自己満足にある。例えばシニアガイドの場合、老後の趣味の延長となり、一方的に知識を押しつけられるので、聞く側は気づいたら疲れてしまう。人間はインプットよりアウトプットで元気になるとされている。
話す側は話すことで、どんどん元気になっていくのだが、聞く側は徐々に時計を見始めて、そわそわしている様子は往々にして発生している。せっかく興味をもったとしても、ガイドの提供情報のミスマッチが起こるのは非常にもったいないことである。
ガイドプログラムを面白くしていく際に参考になるのがNHKのテレビ番組「ブラタモリ」だろう。土曜日19時30分から放送されているこの番組を愛聴するまちづくり関係者も多い。ブラタモリの番組紹介では、街歩きの達人・タモリさんが“ブラブラ”歩きながら知られざる街の歴史や人々の暮らしに迫る。話題の出来事や街に残されたさまざまな痕跡に出会いながら、街の新たな魅力や歴史・文化などを再発見すると記載されている。
多くの人をとりこにするには三つのポイントがあると考える。一つ目が「地学・風土的アプローチ」である。歴史を淡々と紹介するのではなく、まずは地形が形成された太古から地学的な流れを説明する。そして、人々の生活がその自然との営みの中でどう形成されてきたか、より大きな時間文脈の中で風土といった観点を丁寧に掘り下げ、それが今にどう息づいているかを紹介している。
二つ目が「お題提供と回収」である。番組冒頭に一つの問いを与え、それをじっくり参加する中でひも解いていき、最後にきちんと回収していく。主催者が主張したいテーマを伝えるという構成で、メッセージ性がしっかりしているということも特徴だろう。
三つ目が「分かりやすい専門的考察」だろう。難しそうな事象もパネルや模型を使い、ビジュアルで分かりやすく紹介することでイメージを湧かせやすい構成となっている。つまらない授業を聞いている感じにはならず、興味をそそる仕掛けというのがポイントだろう。
プロフェッショナルのガイドとしてこれらの技術をしっかりと身に付けていければ、もっと多くの参加者をとりこにして地域のファンを増やしていけるに違いない。身近なところにあるたくさんのヒントを元に、日々見せ方・伝え方を工夫して、改善を重ねることで魅力的なプログラムが増えていくことを願いたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)