令和4年度概算要求や令和3年度補正予算等の情報が徐々に公開され始めている。観光庁事業で、注目されている一つのキーワードが「第2のふるさとづくり」である。コロナ禍等によって働き方・住まい方に関する意識が変化する中で、密を避け、自然環境に触れる旅へのニーズが高まっている。ふるさとを持たない大都市の若者が増え、田舎にあこがれを持って、関わりを求める需要の拡大が背景にある。
この需要に対し、いわば「第2のふるさと」として、「何度も地域に通う旅、帰る旅」というスタイルを推進・定着させることで、国内観光の新しい需要を掘り起こし、地域経済の活性化につなげることを目的としている。これまでも関係人口構築といった文脈はあったが、ウィズコロナ時代の需要変化により即したモデル構築をできればと、今秋から有識者会議も既に3回行われており、取り組み地域での実証が次年度期待されるところだ。
有識者レポートでは「第2のふるさと」に至るまでに四つのステップが想定されている。(1)観光やワーケーションで地域の方との雑談やローカル食を楽しみ、地域の魅力に共感して、また来たいと思ってもらう(2)心地よい場・帰属する場所として再訪したくなり、リピートにつなげる(3)共有された大義のために役割を果たす関係人口へ昇華していく(4)自分事として主導的機能を担い、多拠点居住者となって地域に積極的に関わる―といった流れである。
次年度において、これらの実現のために滞在コンテンツや滞在環境・移動環境を整備しようとする取り組みは大いに注目したい。
ここで留意をしてもらいたいのが、滞在のデザインである。コロナ禍でも加速したワーケーションの取り組みも、誰をどう呼んで、どんな価値提供するかが明確になりきらずに、ハード整備等が目的化されたものを数多く見てきた。大事なのは、誰にどんな価値を提供して、何に共感するから、また来たくなるのかの設計ではなかろうか。
来訪者に当事者意識を持ってもらうためには、大きな思い出がその地域に刻まれたり、いつでも「おかえり」と自分を受け入れてくれる人がいたり、関わり続けたいものがあるかどうかだと考えている。
特に大事なのは、大義とプロセスではないだろうか。廃れゆく祭り文化を遺す、乱開発された自然を再生する、伝統的まちなみににぎわいを取り戻す、古民家を地域拠点へ転換する、田んぼを食育環境に変えていく等々。
テーマは大小どんなものでもよいが、自分が関わることでその地域がより良くなっていくという大きな共感性があり、そのやりがいが明確に設計されていれば、使命として「第2のふるさと」に関わることになるだろう。今後の交流拡大において、地域のよさをアピールしていくことも大事だが、地域が成し遂げたいビジョンと実現への課題を積極的に掲示し、一緒に解決したい応援団を形成していくことが成功への近道になるに違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)