2022年はサステナブルツーリズムがより加速していく年になると確信している。昨年12月に一般財団法人運輸総合研究所・国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所・観光庁主催で「観光を活用した持続可能な地域経営の普及・促進に関するシンポジウム」が開催された。弊社も企画運営に関わりながら運営面をサポートしたが、今年はより国内でも各所での浸透が進みそうである。
いくつか興味深い点を整理したい。まずコロナ禍における需要変化である。ブッキング・ドットコムが30カ国3万人に調査し、21年6月に発表した「サステナブル・トラベルレポート2021」のデータでは、61%が「今よりサステナブルに旅行したいと思うようになった」と回答している。
また、アメリカン・エキスプレスが7カ国1万人に調査し、21年1月に発表した「世界の旅行トレンドに関する報告書」では、72%が「旅行を通じて地域コミュニティを応援したい」と回答している。
全世界的に責任ある持続可能な観光、本物であること、地域コミュニティに良い影響を与えることを追求する流れが加速していることを理解していく必要があるだろう。
次にUNWTOが考える持続可能な観光地づくりに関するポイントである。“訪問客・業界・環境および地域社会のニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮に入れた観光”と定義されている。(1)長期的経済活動の保障をして、経済的に成長できる(2)環境資源の利用の最適化を図り、環境的に適正である(3)地域コミュニティへの配慮を行い、社会・文化的に好ましい―。特にこの3要素を促進することで、50年後、100年後も住み続けたくなる地域をつくることが期待されている。
現在、INSTOという全世界の持続可能な観光地づくり国際ネットワークも構築され、世界で30の地域が先導して動いているようだ。
例えば先進のカナダのトムソン・オカナガンにおいては、季節性、観光資源の点在、先住民の支援・住民生活との調和という三つの観光課題を解決していくべく、(1)地域を象徴する商品の発掘(2)先住民に関するストーリーの発信(3)地域の食を豊かに(4)人々の視野を広げる(5)本物の体験づくり―の五つの観点から新たな観光商品開発を行っている。そして月別の観光客の均一化、国内観光客の獲得数、地域住民の満足度などの指標を追っているという。
世界では各所でサステナブルな取り組みが加速して、スタンダードになってきている。コロナ後を見据えて、世界の中でも選ばれ続ける観光地になるために、皆さまの地域においても未来を見据えた議論を重ねていくことを期待したい。
国内経済が徐々に回復してきた中で、目の前の対策ももちろん大事ではあるが、客観視できる今こそ未来への対話も忘れずに動いていくことが、長期的回復への近道になることは間違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)