4月1日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(通称・プラスチック資源循環法)」が施行された。そもそもプラスチックの削減とリサイクル促進を目的として、2021年6月4日に成立した法律である。宿泊施設や飲食店において、5品目も削減が義務化されるものとなっている。年間5トン以上のプラスチック製品を提供する事業者は罰則が厳しくなり、取り組みが不十分な場合は社名の公表や、命令に従わない場合は50万円以下の罰金が科されるものとなっている。
宿泊施設において、この法律施行にあたり、準備をしっかりとされてきたところもあるだろうが、手探りの中スタートしたところも多いのが実情だろう。
バスアメニティ等「歯ブラシ・カミソリ・クシ・ヘアブラシ・シャワーキャップ」の5品目の使い捨て製品に対して対策を行うことが義務付けられた。削減の方法としては、有償での販売、不使用時にポイント還元、提供時に使用の意思を確認、繰り返し使用を促す材質や形状変更でプラスチックを削減、サイズ変更、事業者内で繰り返し利用といったこと等が考えられている。
リーズナブルな価格帯のところはフロント提供に切り替える傾向が強く、高単価のホテルでは使用する素材の変更等で対応しているといった傾向が強いように感じている。宿泊施設のクラスによって展開する方向性が異なっている印象がある。
今後、この法律への対処策で宿泊施設の印象・顧客満足度も大きく変わってくるように感じている。
やらされ感で最低限の対処だけするのか、やってはいるけれど、以前もこちらで取り上げた見せかけのSDGsウォッシュ的な対応でSDGsのロゴを並べて表現していくのか、もっと地球や地域の未来を考えたビジョンをお客さまと共に創り上げていけるのか、ここで大きな差が生まれる。各宿泊施設の社会との向き合い方をお客さまにどう伝えていけるか、コミュニケーションのメッセージ性次第で選ばれるかどうかが変わってくるだろう。
今回のこの施行に関する情報を海外の旅行会社に提供したところ、歓迎を通り越してそんなことはもっと早くやるべきだったとの声の方が多い。グローバルな客観的目線でみていくと、日本の宿泊施設において過剰サービスになりすぎてしまっていたことを見直すいい機会となったと考えていけるといいのではないだろうか。
日本のお客さまを相手にした際も各宿泊施設がお客さまにどんな時間を提供していきたいのか、そのサービスの在り方を本質的なところから考え直すいい機会になったと捉えていくと、宿への共感も増すことができるようにも感じる。
今回の法改正をやらされ感で取りあえずこなすのではなく、各宿泊施設の顧客提供価値を再定義する機会となり、そのポリシーがファンづくり・リピーター、ブランディングにつながっていくというサイクルが出来上がっていってくれることを願いたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)