昨今、サステナブル・ツーリズムの発展型として注目されているのが、リジェネラティブ・ツーリズム(Regenerative tourism)である。再生型観光のことを指しており、訪問先をよりよくして帰る旅のスタイルをいう。サステナブル・ツーリズムが環境・文化/社会・経済の側面から地域の持続性を考えた責任ある滞在の在り方を求めているのに対して、このリジェネラティブ・ツーリズムは観光客の積極的再生関与が特徴として挙げられる。
リジェネレーションとは、再生的・繰り返し生み出すという意味を持つ言葉である。気候変動やサステナビリティへの関心が高い人々を中心に、地球規模でより積極的な関与をしていこうという潮流の中で語られるようになった概念である。
世界的にもポスト・コロナに向けて、各種団体がこのリジェネラティブ・ツーリズム促進に向けて活動を強化し、コラボも拡大している。もともとサステナブルが危機に対してマイナスをゼロに近づける活動という意味合いが強いのに対し、リジェネラティブは、プラスの影響に積極的に参画する活動と捉えていくと分かりやすいかもしれない。
サステナブル的要素は必要な概念と理解しつつも、どこか環境問題偏向になりがちで、行動制限が増えることを理性で理解して受け入れていく必要があった。対して、リジェネラティブ的要素は、積極的に自身が関わることで変化を感じることができるので、共感を得やすい。ゆえに、観光客と地域自体の満足度アップの両側面を追うことができるのが特徴と考えてもいいだろう。
このリジェネラティブ的な概念が日本各地で導入される中で、日本人の情緒性に注目していくと理解しやすいかもしれない。ルイス・フロイスが著書「ヨーロッパ文化と日本文化」で伝えるところの、欧米の論理的思考と日本人の情緒的思考の違いは今でも大きく変わっていないように見受けられる。この違いを理解していくと、日本人にはこのリジェネラティブ的な概念の方が受け入れやすいと考えてもいいかもしれない。昨今、観光のSDGs等各種対応事項に関して、やらされ感でどこか気乗りしない日本人が多かったのはこのギャップからではないだろうか。
日本人は、誰かのオモイを応援することには積極的に参加するベースがあり、そこにつながりや顔が見える感情的要素からの選択が多い人種である。日本人の共感性から考えると、災害復興や地方創生としての文脈で解釈した方が、導入もしやすく成果も得られやすいだろう。
昨今普及してきた「おてつたび」等の概念も、その背景に近いと考えられる。リジェネラティブ・ツーリズムがこれから世界で加速していくことは間違いない。その中で、日本人も積極的に参加し、意義がある地域再生への積極的参画プログラムを創出することができた地域は応援団をどこよりも早く形成でき、どこよりも早く再生していくに違いない。世界の需要も捉えた地域再生の未来が楽しみだ。
(地域ブランディング研究所代表取締役)