政府によるコロナウイルスの水際対策が6月1日から緩和され、入国者の1日あたりの上限を1万人から2万人に引き上げた。ウイルスの流入リスクの低い順に「青、黄、赤」の3グループに、国・地域が分類されている。
アメリカ・中国等の98の国・地域が「青」となり、ワクチン接種有無にかかわらず、入国時の検査や自宅待機を求めないことになった。「黄」はサウジアラビア等99の国・地域でワクチン3回接種者のみの免除。「赤」はパキスタン等4カ国で接種済みでも検査・自宅待機を求めるといった指定だ。10日からは「青」の国・地域から、添乗員付きのパッケージツアーの受け入れが再開される。
2022年4月から徐々に緩和が開始されていたが、この4月の訪日客数は13・9万人とコロナ前19年4月が292・7万人であったことを考えると、ギャップはまだまだ大きいことに変わりはない。しかし、20年4月が2900人、21年4月が1万人であったことを考えると、少しずつ回復してきている。
この2万人の意味するところを考えてみたい。2万人には帰国者も含まれるので、少し乱暴な計算となるが、年間365日で単純計算すると、入国可能者数は730万人となる。19年の訪日客数が3188万人であったことを考えると、まだまだではあるが、徐々に緩和枠が広がっている。
7月1日には3万人への引き上げ案や上限撤廃案も検討されているので、今後の緩和基調は既定路線とみていいだろう。為替相場も追い風である。対ドルで2019年平均が約110円だったのに対し、6月1日現在約130円と20円ほど円安が進んでいる。
既に実施されていた商用滞在等の緩和の効果もあってか、弊社のある浅草においては外国籍であろう方の観光客増加の実感がある。また、弊社のブッキングサイトでも海外在住の方からの予約が続々と入ってきており、インバウンド回復の兆しをひしひしと感じている。昼間に浅草のまちなかを歩く人も、国内客の需要でかなりにぎわいは増してきた。
ただ、国内客はほぼ日帰りで宿泊需要までは応えきれていないからか、浅草においてもオリンピックへの期待で開発が続いたホテルで、まだオープンすらできていないところが数多くあるのも事実である。
国内客需要だけではなかなか観光地再生の見込みを描きづらいことを考えると、インバウンドの早期回復を期待したいところはどの観光地も同じ感覚だろう。
今後の展望として、UNWTO(世界観光機関)の予測でも観光市場の完全回復は25年という内容をみると、焦らずにじっくりと準備していくことが必要だろう。また、インバウンドへの過剰な期待をせずにバランスを考えた受け入れ戦略の整理が必要となるだろう。
各種緩和や企画の実行で刻一刻と観光の動態は変化していくことは間違いなく、期待したいところである。そんな中、目の前の状況だけに振り回されることなく、この2年で議論してきたであろう地域自体・施設自体がどうありたいか、今一度明確に中長期を見据えた軸を持った対応を強化することで、今後リスク対応できる、未来に残る再生を迎えてもらいたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)