2022年度に入り、各所でビジョンや戦略立案のお手伝いをする機会が増えてきた。これまでの2年間は先が見えない中でのコロナ対応を中心とした、まずは目の前の感染症対策、マイクロツーリズムやワーケーション等の新需要に対応した受け入れ体制構築といった対策が中心だったが、次を見据えた戦略が必要なフェーズに入ってきた。
国際航空運送協会(IATA)が6月に発表した22年の世界の航空旅客予測は38億人。21年10月に公表した数字から4億人上昇し、コロナ拡大前の8割増しまで回復する見込みである。欧米を中心とした入国規制緩和の影響で、従来予想よりも早まっているとの見通しのようだ。
同団体の3月発表予測では、世界の旅行者数は19年対比で22年83%、23年94%、24年103%、25年111%。海外旅行者数でみても、21年は27%にとどまったが、22年69%、23年82%、24年92%、25年101%といった具合である。ANAやJALの予測では23年3月期において国内線で8~9割、国際線で3~4割の回復とのこと。
とかく国内では、6月に解禁された入国規制における添乗員付きのことや、マスクの必要性からインバウンドの回復は相当後だといったイメージが先行しがちなところが多い。ただ、感染状況や国内の世論等を見ながら徐々にインバウンドが復活していくことは間違いない。
確かに、韓国や台湾等からの回復が先に予想されることもあるが、一つ、25年という3年後で考えると、コロナ前と同様の需要が回復している市場がそこにあることを忘れてはならない。
この25年は、大阪・関西万博が予定されている。オリンピックは結果的に肩透かしになってしまった部分があるが、オリンピックという一つの目標があることでこの国は結束しやすく、一丸となって動いていた。25年の大阪・関西万博をフォーカスするかは関西が中心となるだろうが、各地においてこの回復期の25年から逆算した戦略を考えてみてほしい。
各地の議論をする際に、この2年で行政やDMOの観光セクションの担当者が変わってしまったことや、目の前の対処をすることにフォーカスすることが求められていたがゆえに、気づけば、先々のビジョンや目標を策定し、そこから逆算する思考が各地域で弱くなっているように感じる。
コロナ禍における観光需要の落ち込みの底はすでに脱したといっても問題はない。あとは回復の階段を上がっていくだけだ。その時、25年で各地がどうありたいか、単純に過去に戻すのではなく、あるべき10年、20年後を見据えた中での25年の位置づけを考えてもらうことで、新たな明るい未来に向けて一つ一つ歩を進めていってもらいたい。
今年の夏も一定の回復が期待されるが、政策が変わってからそれに対応していくようでは遅い。今のうちに中長期のビジョンと25年にどうありたいか、からの戦略を策定し、各地のよりよい再生のシナリオとしていってもらいたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)