各地で伝統工芸を扱う体験プログラム造成サポートの機会が増えてきた。地域らしい滞在を考えた際に、よりホンモノ思考の需要に対応すべく、伝統工芸とのふれあいプログラムの需要が増えている。ただ、伝統工芸のプログラム化は、価格が安すぎたり、職人の手間が増えたりと課題が発生しがちである。より持続的なプログラムにしていくために必要な観点を五つ整理してみたい。
(1)目的=まず何のための受け入れか、目的を明確にする必要がある。認知拡大、職人のモチベーション、販売促進、後継者候補探し等、地域ごとに目的およびその優先順位を明確にした上で、プログラムの在り方を整理するとよい。総じてどの伝統工芸の産地においても、伝統工芸自体の持続性をよりよい流れとしていく改善は共通の課題である。体験プログラムはその持続性に貢献するための手法として、活用していく立て付けが出来上がることが望ましい。
(2)受け入れ頻度や条件=伝統工芸を扱う職人や作業所において、本業は工芸作品を作ることであり、体験提供は本来業務ではない。この前提を十二分に理解して、受け入れの負担とのバランスを整理する必要がある。本業が止まると本末転倒であるがゆえに、受け入れの頻度は月に何回程度なら可能か、各種説明を職人が対応できなければ連携のガイドをどうするか、プログラムの受け入れ窓口は別の人が担当して負担を減らせるようにする等整理していけるとよい。
(3)価値の定義=生まれた背景、地域の独自の歴史的な位置付けや職人しかできない特殊技術等をしっかりと伝えていきたい。いかに職人の技術がすごいのか、素材や加工手法がなぜそこで生まれたのか、きちんと理解・体感してもらえるプログラムにすることができれば大きな価値になってくる。
(4)プラン設定=しっかりと時間をかけて学べるものや、カジュアルに体感できるもの等のプランバリエーションを整えて、松・竹・梅とプランをそろえていけると、顧客ニーズに合った形での程よいマッチングにつながるだろう。松=弟子入りできて1泊2日10万円、竹=自らも体験できて6時間3万円、梅=工場見学で2時間1万円―など、複数のプランがあるとより双方によい受け入れにつながる。
(5)購入動線=価値を理解・共感した参加者が最終的に購入につなげられるような場所、内容も準備しておく必要がある。これは終盤がよい。私自身、各種モニターツアーで数万円のものが続々と売れる現場を目撃している。価値および持続のストーリーに共感した参加者は購入という形で、自らも積極的に関わりを持ってくれる。プログラムにかけた時間との相関性も高く、長いほどより高く売れる。
以上、五つのポイントを整理していければ、よい持続的なプログラムが出来上がるだろう。伝統工芸のプログラム化は特殊な領域だからこそよいモデルを構築し、産地の持続のため産地、参加者双方にとって負担なく、ハッピーなプログラムが増えていくことを願いたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)