今年は夏の定番企画が復活し、より進化して展開された。単純なコロナ対策だけでなく、課題としてあがっていた感染対策や人数制限の関係で有料化を進める動きが加速した。
8月2、3日に開催された日本三大花火大会の一つ、新潟・長岡の「長岡まつり大花火大会」では、これまで有料・無料双方の席を用意していたが、全て有料席に切り替えて、約16万席を有料化。市民向けの先行販売では、全体の40%が埋まったという。1席千円から6千円の有料席とし、チケット制にすることで、購入者情報の取得やエリアごとの人数管理、不正転売時の取り締まりが可能といった仕組みを導入。
8月2~7日に開催された「青森ねぶた祭」では、5、6日に1枠20万円と100万円のプレミアム観覧席が用意された。20万円の席は大型桟敷の1階席で最大4人まで利用可能。青森県の厳選地酒「田酒」や白神ワイナリーの「KAMUYシードル」と地元食のペアリングを楽しめるもの。
100万円の席は最大8人まで利用可能で、見やすく広々とした2階席。地元食のペアリングに加え、専属コンシェルジュが対応し、ねぶた師がねぶたの歴史やねぶた制作・作品に込めた思いを語ってくれるプラン。ゆったりと祭りを見たい会社経営者等に評価され、2日で完売したという。
これまで祭りの運営は、一定の運営費を行政の補助で賄い、広告枠等の単純な協賛モデルが中心であった。また、基本は無料で参加でき、混んでいるのは当たり前といった風潮もあったといえるだろう。それに対し、コロナ禍の価値変容から多くの人がゆったり過ごすことや、自分たちだけの特別時間に対して別料金を払うことに違和感がなくなってきたことは一つの大きな意義だ。また、参加する側は、もちろん自分たちの特別時間を過ごすことに料金を支払っているが、併せて準備してくれた方々の経験に対してしっかりとリスペクトをした上で、その維持・持続のための対価を支払うことが当然であるという価値観が浸透してきていることも意義深い。
コロナ禍の2年間は各地で祭り等のイベントが中止され、再開に向けて地域内での合意形成等に知恵を絞り、工夫をしてきた。地域の方々も、これまで自分たちの年中行事、風物詩が当たり前ではなく、いかに誇りだったかということに気づき、大きなシビックプライドであることを再認識したのではないだろうか。
だからこそ、維持・ファン拡大のために事業モデルを再構築し、有料化はもちろんのこと、収益性の高いプレミアムプラン等も取り入れてきちんと管理できる仕組みをつくることで、祭りのあり方が発展していくに違いない。地元枠もきちんと担保しながら、プレミアム化も同時に進めていければ、インバウンド回復期に地域へもたらす経済効果はより大きなものになっていくだろう。
(地域ブランディング研究所代表取締役)